「人口減少」楽観論に逃げる日本の避けがたい未来 見たくない現実に目をそむける3つの問題点
民間のリスクマネーも同様です。東証1部上場企業において、外国人投資家の持ち株比率は30.4%に達し(2022年3月末現在)、無視できない存在になっています。外国人投資家は、諸外国の株に比べてパフォーマンスで劣る日本株を今後も買うでしょうか。民間のリスクマネーも、先細りすることが確実です。
さらに心配なのが、人材です。少子化による労働力人口の減少で、すでに人手不足が深刻化しています。飲食店・コンビニ・建設・介護といった業種は、外国人労働者抜きではもはや事業が立ち行かない状態です。
いまのところ、中国・ベトナム・インドネシアなど近隣の発展途上国から日本に出稼ぎに来てくれています。しかし、今後これらの国の給与水準が上昇したら、他の先進国と比べて賃金が低い日本は、見向きもされなくなるでしょう。
このように、人口減少社会では、資金も人材も十分に集まらなくなります。この状況では、現在の豊かな生活はもちろんのこと、最低限の生活を維持することすら困難になってしまうのです。
「である」と「べき」を混同してはいけない
京都大学・人と社会の未来研究院の広井良典教授は、『人口減少社会のデザイン』(2019年)などで「日本の人口はある程度減少してもよい」とし、人口減少社会は都市集中型の社会モデルを見直し「持続可能な社会」を作るチャンスであると前向きに捉えています。
人間は、悲観的な話を聞くのが嫌いなので、こうした楽観論が出てくると、喜んで飛びつきます。しかし、ここまでの考察から、人口減少で日本が悲惨な状態になることは避けられません。「悪いことばかりではない」のは事実ですが、「悪いことの方が圧倒的に多い」のもまた動かせない事実です。
広井教授が言うように、「人口減少社会を明るい未来にするべき」ですが、「人口減少は社会は明るい未来である」という間違った事実と混同をしてはいけません。広井教授は、「事実(sein、である)と当為(sollen、べき)の混同」という重大なミスを犯しているように見えます。
私たちは、まず人口減少の厳しい現実を直視し、その上で、少子化対策を進めるとともに、人口減少の悪影響を抑えるために国家のデザインを見直す必要があるのです。
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