「キーボードをバンバン」職場の苛立つ人の扱い方 アドラー心理学では原因ではなく目的を考える

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「不機嫌」という感情についてアドラーはこういう言葉を残しています。

<ADLER WORDS>
「この子が社会的なつながりを取れないこと、その結果、不機嫌であることが彼女に残された活動のほんの数少ない領域の一つだということを示しています。不機嫌であることは、彼女の母親を拒む最良の手段でもあり、だからこそ、不機嫌であることを好んでいるのです」
『アドラーのケース・セミナー』

つまり、「不機嫌でいること」は「母親を拒む」という「目的」を達成するための最も良い手段だということです。

不機嫌な人を見ると、多くの人は「彼・彼女に何があったのだろう」と「原因」を探ろうとしがちです。しかし、先ほどもお伝えしたように、人間は、同じ状況・環境であっても、同じ行動をとるわけではなりません。

「◯◯だから、必ず××になる」「◯◯する=××になる」という、因果関係が成立しているわけではないのです。であれば、「なぜ少女は不機嫌なのか」と「原因」を考えるのではなく、「何の目的があって不機嫌でいるのか」と「目的」を考えたほうが適切といえます。

必要以上に人の言動に「原因」を探す必要はない

例えば、製造業などの「モノ」の世界では、「なぜ」は効果を発揮します。それは、「因果関係」があるからです。

「ボタンを押す」と「動き出す」といった仕組みがモノにはあります。

あるいは、自然界の法則も、同様です。

「水が氷になる」のは「氷点下になったから」です。

こういうモノや事象の世界は、因果関係があるので、「なぜ」と「原因」を考えることは有効です。ミスやトラブル、不具合があった場合にも、「なぜ」と、原因を追求するのは重要なことといえます。しかし、人間は、「原因」を探したところで、みんながみんな同じ行動をとるわけではありません。だから「原因」を考えてもしかたないともいえます。

ならば、人の言動に必要以上に「原因」を探す必要はないのです。それよりも、「目的」を考えたほうが建設的です。

次ページその感情を使って、なしとげたい「目的」は何か
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