米有力紙「日本人が国葬に怒り狂っているワケ」 日本人は今、何を訴えようとしているのか
日本の政治を研究する神田外語大学のジェフリー・J・ホール特別選任講師は、「今回の暗殺は、旧統一教会と自民党の協力関係という暗部に光を当てることへの直接的な引き金となった」と指摘する。
旧統一教会の行為が明らかになるにつれ、山上容疑者は、自分ではどうしようもない経済的、社会的な力に振り回されていると感じている一部の人々にとって、一種のロマンチックなアンチヒーローになってきている、と安倍元首相の死に対する国民の反応を詳細に追跡しているジャーナリストの河崎環氏は言う。
また、過去数十年にわたる経済成長の停滞と格差の拡大(安倍元首相の経済政策が一因となっている)により、「自分は被害者であるという強い意識」を持つ世代が生まれた、と同氏は指摘する。
容疑者を擁護する「山上ガールズ」たち
ネット上では、河崎氏が「山上ガール」と呼ぶ女性たちが、山上容疑者のルックスや同容疑者がツイッターのつぶやきで見せた本好きの知性について、熱狂的に語り合っている。同容疑者の叔父によれば、彼を擁護する人たちが、彼のいる拘置所にたくさんの小包を送ってきている。叔父はそれを、嫌々ながら自宅で受け取っているという。
山上容疑者に同情的な伝記映画すら上映されようとしている。映画監督で元日本赤軍の一員であった足立正生氏は、年明け早々に予定している完全版の全国リリースに先立って、安倍元首相の葬儀の当日に一部のアートシアターでその映画を上映する計画だという。
旧統一教会が一気にスポットライトを浴びた結果、宗教団体の支援を受けている他の政治家グループと与党との長年にわたる提携関係にも注目が集まった。
仏教団体の1つである創価学会を母体として結成された公明党は、1999年以降自民党との連立与党となっている。創価学会の会員は公明党の立候補者のために選挙運動を展開し、自民党員が拠り所とするまとまった数の得票数を集めることによって彼らをサポートしている。
「すべてが明るみに出るとしたら、間違いなく暴力沙汰が存在する」とリーバイ・マクラフリン氏は言う。同氏はノースカロライナ州立大学における哲学と宗教学の准教授で、日本研究を専門としている。「創価学会は何十年にもわたってこの手の批判の対象となっている」。