米有力紙「日本人が国葬に怒り狂っているワケ」 日本人は今、何を訴えようとしているのか

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そしておそらく最も意外な展開であったのは、山上容疑者が非難されるどころか、彼の話が日本の人々の深い琴線に触れたことである。あまり活発ではないことも多い日本のメディアは、統一教会の日本におけるビジネスや、山上容疑者の母親など脆弱な人々を食い物にして金銭的利益を得てきたことを非難されている同教会と、政治家とのつながりについて数週間にわたって掘り下げてきた。

27日に日本の首相としては55年ぶりとなる国葬が開催され、これに参加するため数百人の各国の要人が東京に到着する予定である。国葬に対する反発は、約8年連続した安倍政権に対する国民投票にもなっている。

安倍元首相は国際舞台ではおおむねもてはやされていたが、日本国内での意見は激しく分かれており、その右傾的な政策に反対していた人々は現在、安倍政権に対する無数の不満を訴えているのである。

「怒れなかったこと」に対する怒り

滋賀大学の田村あずみ准教授(社会学)は、国葬に批判的な人々は、政友に対して不適切な便宜を図ったり、新型コロナウイルス流行の初期段階での処理を誤ったりしたことへの非難など、物議を醸す判断やスキャンダルに数多く関与してきた政治家を不当に祭り上げるものだと考えていると話す。

同准教授は、「人々は現在、『どうしてあの時、もっと多くの人が怒らなかったんだろう』と考えている」と話す。「これらは安倍政権を弱体化させてしかるべき問題だったのに、そうはならなかった」。

有権者たちは、安倍元首相の党を安定性の名のもとに支持し続けるかもしれない。しかし彼らは、安倍元首相の死を称える動きに反対することで、同氏の生前の行動への批判を表明しているのである。

国葬に対する抗議デモでは、何千人もの人々が東京都心の代々木公園に集まり、女性のエンパワメント、障害者の権利、LGBTQへの賛同、原発や米軍基地への反対など、さまざまな理念を表す色とりどりの旗を掲げていた。

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