ワクチン開発「DX先進企業」が先を行く真の理由 人間の本質に迫る、革新的AI活用アプローチ

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体験

人間の心を強く捉えて離さない願望や関心をうまく活用し、人間的な体験を設計することが重要です。人々がそれまで手が届かなかったような活動へアクセスできるようにする“能力を与える体験”、個人的な成長を促したり、楽しみを提供したり、満足のいく共同作業を可能にする“価値ある体験”、個人のニーズや考え方、感性に合った「ちょうどよい」と思える快適で魅力的な体験を提供する“ニーズにマッチした体験”、個人を超え、地域やもっと広い世界にとって何が一番いいのかに注意を向ける“責任ある体験”などが一層重要になります。

持続可能性

持続可能性を促進する手段としてテクノロジーを利用しつつ、テクノロジー自体の持続可能性を向上させていく必要があります。これには、政府、企業、市民社会が前例のない規模で協力することが重要で、企業はレッドテックをグリーンテックに転換し、テクノロジーを使って持続可能性を推進すると同時に、テクノロジー自体の持続可能性を向上させることが必要となります。日本は言わずと知れた自然災害大国であり、近年は水害の経済的損失を始め異常気象による被害も深刻です。こういった日本という国に生きているからこそ、我々自身が地球全体にかかわる問題に目の前にある解決すべき課題として向き合うべきではないでしょうか。

人間とテクノロジーの新たな関係が発展していく

テクノロジー、特にAIにまつわる技術は、人間の知見を取り込みながら“人間化”を進めています。こうした人間とテクノロジーとの新たな関係が発展していくにつれ、私たち人間は、自分たち自身がどうすれば真に人間的になれるのか、今まで以上に人間の本質に向き合うことになるでしょう。今、新しい技術を用いて私たち自身の能力を向上させ、未来を一から作り上げることができるか否か、それこそが日本がこの先発展できるか否かを決めることでしょう。

企業経営者にとって、ビジネスや社会に関わる極めて対応の難しい課題への取り組みを支援する「テクノロジー」と、「企業戦略」は切っても切れない関係にあります。課題先進国である日本にとって、社会課題をテクノロジーの力で世界に先駆け解決することは、世界で戦う上での武器になり得るはずです。パンデミックをきっかけに、世界ではいち早くDXを実現した企業が存在しています。そしてその他多くの企業もこれからは、自社も同じことを達成できると考えるようになるでしょう。

災害大国日本はこれまでに数多くの災害を経験し、またそこから驚異的な速さで復興してきた経験を持ちます。パンデミックという災害を契機として、一気にDX進めることが日本でできない訳はないと信じています。このまま単に世界の流れに身を任せるのか、あるいは率先してこのチャンスを捉え、ビジネスや社会にかかわる極めて対応の難しい課題を解決していくのか、個人にとっても企業にとっても、大きな分岐点を迎えています。

保科 学世 アクセンチュア株式会社 執行役員 データ&AIグループ日本統括

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ほしな がくせ / Gakuse Hoshina

アクセンチュア株式会社 執行役員 データ&AIグループ日本統括
アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、デジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUB プラットフォームや「AIPOWERED サービス」などの開発を統括すると共に、アナリティクスやAI 技術を活用した業務改革を数多く実現。著書・監修書多数。厚生労働省保健医療分野AI 開発加速コンソーシアム構成員など歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。

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