ワクチン開発「DX先進企業」が先を行く真の理由 人間の本質に迫る、革新的AI活用アプローチ

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あるいは、食品加工機器の分野で世界をリードするスイスの企業ビューラーは、「コ・ラボ戦略」でマイクロソフトと協力して、穀粒選別プロセスにAI(マシン)の能力を活用しつつも人間が主導する、極めて効率のよいアプローチを組み込んでいます。例えばトウモロコシは、アフラトキシンというかび毒の影響を極めて受けやすいのですが、同社の光学選別テクノロジーは、クラウドベースのリアルタイムデータを利用して汚染リスクを監視・分析し、抜き取り調査ではなく、アフラトキシンに汚染された穀粒を特定しています。

『RADICALLY HUMAN ラディカリー・ヒューマン』では、ビジネス・リーダーたちの視点をふんだんに取り入れつつ、これから訪れる未来に向け、企業を変革するための新しいフレームワークを提示しています。

人間とテクノロジーの関係:進化の3段階

本書では、人間とテクノロジーの関係の進化を3段階に分けて解説しています。

ステージ1は、機械中心の自動化です。このステージは人間の“機械的な”作業を文字どおり機械に置き換えるステージです。この置き換え作業が注目され、人間 vs. 機械、あるいは人間の仕事が機械に奪われるといった議論がここ日本においても、メディアを賑わせたのは多くの読者の皆さんもご記憶かと思います。ただこのステージ1は単なる序章に過ぎず、本当の意味でのAI活用ではありません。

続くステージ2は、人間と機械との協働です。人間をAIに置き換えるのではなく、人間の能力を拡張するために如何にAIを活用するのかが問われるステージです。人間とマシンのコラボレーション(協働)が生み出す力を活用して、機械的な作業を人間中心の作業へと変え、事業や業績を改善していく段階です。

ステージ3は、人間中心のテクノロジーの導入です。人間が機械に合わせるのではなく、機械が人間に寄り添い、今ある技術が、人間中心のテクノロジーへと転換を果たす段階です。

日本の現状を見ると、まだステージ1、すなわち、既存の業務ありきでその業務をそのまま「効率化する」「自動化する」という発想に留まっているケースが大半であるように見えます。言い換えるなら、そもそも今ある最新の技術でこそ可能となる「あるべきプロセス」を、考えようとすらしていないように見受けられるのです。パンデミックを経験した今、従来とは異なるアプローチによる仕事のやり方を考える、良いチャンスではないでしょうか。

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