ランクを落とした学校で「1番」目指すのがいい理由 永守重信氏が語る「能力を最大限引き出す戦略」

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野球をするときもエースで4番バッター、しかも監督をしなければ気が済まなかった。ただ、最初からいきなりエースや4番バッターを務めさせてもらえるわけではない。

そこでどうするか。まずは年齢が下の子たちのチームで4番バッターとエースを務めて活躍し、そこで少し自信をつけて、次はもう少し年齢が上の子たちのチームで4番バッターとエースを務める。そこで十分に力と自信をつけてから、同年代のチームでやる。それまでに勝ちを積み上げて自信をつけていたから、同年代のチームでも4番バッターやエースをやり遂げることができた。

これは一例だが、要はいきなり高いレベルを目指すのではなく、小さな成功体験を積み上げて自信をつけていき、少しずつレベルを上げていけばいいということだ。

勉強にしても、いきなり難しそうで分厚い問題集に手を出すよりも、はじめは1番簡単そうで薄い問題集からやっていけば、楽に解けてやる気も出るというものだ。

よく「自分に自信を持てない」という人がいるが、どんな人でも最初から自信を持っているわけではない。また何もしていないのに自信を持てるわけもない。

自分のなかに自信というものを積み上げていくための「戦略」が必要なのである。

上の学校のビリよりも、下の学校の1番になれ

それは高校生の頃、塾を経営しているときにも実感した。

塾といっても、自宅の6畳間を改造して机も自分でつくった小さなものだったが、近所の小中学生がたくさん通っていた。ピーク時には60名以上の生徒が来ていたが、中学生に対しては高校選びなどの進路指導もしていた。

生徒が悩むのはやはり高校を決めるときだったが、たいていの生徒は無理をしてランクの高い高校、偏差値の高い高校を選ぶ傾向があった。

しかし、たとえその高校に合格できたとしても、偏差値の高い学校に入れば、自分より学力が上の者たちがたくさんいる。高校に合格できるかどうかよりも、そこで実際にやっていけるかどうかのほうが問題である。

永守重信氏。一代で日本電産をグローバル企業へと成長させた(撮影:ヒラオカスタジオ)

中国の『史記』に「鶏口となるも牛後となるなかれ」という成句がある。

大きな集団のなかで1番下になるよりも、小さな集団のなかでリーダーを目指せという意味だ。

実際、そのとおりだと思う。高校でいきなりビリになってしまったら、自信を喪失してやる気も失せてしまう。せっかく志望の学校に入れても、周りがすごい人ばかりで自信を喪失してしまったら、その後の人生は辛くなってしまうはずだ。

そこで、私はそういうときには1つか2つレベルを落とした高校に行って1番を目指すことを勧めた。

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