転職時は要注意「放置年金」110万人の機会損失 本人も気づかぬまま毎月手数料が徴収される

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日本の年金制度は、国民年金(基礎年金)と厚生年金保険による「公的年金」、企業や個人が任意加入することができる「私的年金」に分かれる。企業型DCやiDeCoは公的年金に上乗せして受け取ることのできる私的年金で、老後の備えとしてニーズは高まる。2022年3月末時点で企業型DCに約780万人、iDeCoには約240万人が加入している。

だが、個人で加入して自ら決めた掛金を積み立てて運用するiDeCoに比べ、企業型DCは運営する会社が掛金や手数料を負担し、従業員が運用する。福利厚生の一環として積み立てる企業では従業員が自動加入するところもあり、掛金などを自分で払っていないため「資産」との意識が乏しくなりがちだ。

中小企業は企業型DC未導入が多い

企業型DCの導入は右肩上がりに増加してきた。2002年に導入済みの事業主は1318、加入者は約32万5000人にすぎなかったものの、2020年には約3万8000、約750万人にそれぞれ増加している。

企業が拠出した掛金は全額損金算入でき、掛金と運用益の合計額をもとに決定される給付額を加入者が年金として受給する場合は公的年金等控除、一時金として受給する場合には退職所得控除が適用される点も魅力だ。ただ、420万を超える企業数から見れば、その割合は少ない。大企業がほとんどで、全体の99%を占める中小企業ではまだ未導入のところが多いのが実情だ。

そのため、転職先に企業型DC制度がなく、Aさんのように失念したまま確定拠出年金が放置されるケースが相次いでいる。企業型DCの加入者は制度を導入している会社の従業員に限られ、転職や退職をすれば加入資格を失う。つまり、会社を辞める際は積み立てられた年金資産を転職先か、iDeCoに移すことが必要となる。だが、その手続きは加入者自身が行う必要があるため、「年金資産を保有している」との自覚が薄い人は移換を忘れてしまうことが少なくない。

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