国際鉄道展「イノトランス」開幕、注目の裏テーマ 環境対策や新技術よりも関係者が知りたい問題
会場内の関心事はまだある。中国との向き合い方である。中国中車はアルストムやシーメンスをしのぐ世界最大の鉄道車両メーカー。その売り上げの大半は中国国内向けとはいえ、中国政府がその政治力を生かして海外に売り込めば、もともと価格競争力が高いだけにほかの鉄道メーカーにとっては脅威だ。
中国中車は、前回のイノトランスではカーボンボディのハイテク電車を持ち込んで来場者をあっと言わせた。今回は欧州での運行を念頭に開発したハイテク電気機関車を展示して2匹目のドジョウを狙う。「環境性能の高さに加え、複数の電力システムを備える。欧州各国での相互直通運転が可能だ」と、中国中車ドイツ事務所のリアン・タン次長が胸を張る。
中国の鉄道関連メーカーは車両だけではない。部品や材料などのメーカーもじわじわと世界で存在感を高めている。今回イノトランスに出展する中国企業は36社。日本の24企業、団体を大きく上回る。
「本音」を聞き出す絶好の場
こうした動きを見れば、中国メーカーがますます台頭してくると考えるのは至極当然といえる。むしろ、イノトランスに参加する関係者たちの関心事は、中国メーカーとの付き合い方だ。今も4年前も中国製品の価格の安さは変わらず魅力的だが、4年前にはなかった米中対立やロシアへの接近といった地政学リスクが事態を複雑にする。
取引すべきか、距離を置くべきか。環境対策やIoTと違って正解はない。だからこそ、イノトランスは会場内で各国のメーカーや鉄道会社と個別に話をして本音を聞き出す絶好の機会なのである。
いかにインターネットが発達しようとも、直接面と向かって話をしなければ得られない情報もある。微妙なテーマであればなおさらだ。地政学リスクの高まりの中で開催される今回のイノトランスは、各国の鉄道関係者にとってかつてないほど重要なイベントとなりそうだ。
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