メタバースで「クルマ買う」はリアルな話なのか? 開発から販売まで今、考えられる3つの可能性

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Second Lifeでは、トヨタや日産がそのバーチャルな世界の中で土地を所有し、さらに日産は新型車のプロモーションのために「車の自動販売機」を提供していた。2007年あたりからこのような活動があったことは、今振り返ってもスピード感のある動きであったと言えるだろう。

日産は、現在もメタバースに対して積極的である。

2021年11月4日にバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」をオープンし、新型BEV「アリア」をソーシャルVRサービスの「VRChat」 内に公開している。日産が銀座で運営するショールーム「NISSAN CROSSING」を仮想空間上で再現しているわけだ。

実際のショールームを訪れるような感覚となる「NISSAN CROSSING」
実際のショールームを訪れるような感覚となる「NISSAN CROSSING」(写真:日産自動車)

さらに日産は、2022年5月に軽自動車BEV「サクラ」を発表する際、リアルだけでなくメタバース空間でも発表会も開催し、大きな話題を呼んだ。サクラにもっとも早く“試乗”できる「NISSAN SAKURA Driving Island」を一般公開し、試乗体験に加え充電体験も行えるようになっている。

「サクラ」のお披露目会
「サクラ」のお披露目会(写真:日産自動車)

日産によれば、メタバース活用には次の狙いがある。それはデジタル上での新たなコミュニケーションの場作り、そしてコミュニティ作りである。先述のバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」は24時間365日、国内外問わず開放しているが、社員が常駐していないことが特徴となっている。

つまり、企業である日産が、一方的にマスマーケティングの文脈で宣伝や啓蒙活動をするのではなく、ユーザー同士での双方向的なコミュニケーションを目的にしているのだ。ここで言うユーザーは、必ずしも現実世界で日産車に乗っているとは限らないところがおもしろい。

ヒョンデやフェラーリもメタバースに参入

日産のほかにも、現代自動車(ヒョンデ)はメタバースで現実世界に存在するロボットを操作する「メタモビリティ」の構想を発表している。この構想の技術的裏付けは、2021年に買収が完了したロボット研究開発大手、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)社であろう。メタモビリティの構想では、Boston Dynamicsのロボット技術が活用されるという。

また、高級車メーカーであるフェラーリもメタバースに参入し、Epic Games(エピックゲームズ)社が販売・配信する「Fortnite(フォートナイト) ※」に「296 GTB」を導入している。

※2017年公開のオンラインゲーム。クラフト要素のあるサードパーソン・シューティングゲーム(TPS)。"メタバース的な要素を一部持つゲーム"と見なされる。

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