丸亀製麺、ケニアにテリチキの店を出すワケ 海外ではうどんにこだわらず積極出店

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タレントの武井壮(右)を起用したCMで巻き返した粟田貴也社長(左)(撮影:今井康一)

順調な海外とは裏腹に、国内の出店は伸び悩んでいる。前期14年3月期ごろから、自社店舗の商圏が重なり合う「自社競合」の影響が出てきたからだ。丸亀製麺の直営店舗数は昨年12月末時点で782店だが、うち今期中の純増は8店にとどまる。足元の出店は自社競合の心配がないショッピングセンターが中心であり、ロードサイドは一時凍結状態にある。毎年100店舗以上を出店していたころとは様変わりの状況だ。

CMで売り上げ回復、株高生かし財務も強化

Wカツカレーも売れ行きは好調だ

もっともこの数カ月、経営課題の克服には大きな進展がみられた。一つは自社競合が足かせとなり不振を続けてきた既存店の売り上げが持ち直してきたことだ(「復活の丸亀製麺、高単価品が全国CMでヒット」)。

昨年夏に実施した期間限定の高単価メニュー「肉盛りうどん」と初の全国テレビCMの投入が大当たりし、その後も、同じく高単価バリュー商品とテレビCMの組み合わせというフェアが立て続けにヒット商品を生み出している。

来客頻度が向上し、新規顧客も呼び込んだことで、それまで前年同期を大きく割り込んでいた既存店の月次売上高は、昨年8月から連続で100%超えと、息を吹き返している。

財務体質の強化も進んだ。これまでは稼いだキャッシュだけでは出店などの投資資金が足りず、借り入れで賄うことが多かった。ところが今期はヒット商品の連発で業績が絶好調のうえ、出店資金も抑制され、キャッシュフローが急改善している。

加えて昨年11月には、株式市場の上昇と自社の株高をタイミングよくとらえて、増資で47億円の資金を調達した。結果、12月末の現預金残高は過去最高水準の121億円へと積み上がり、これまで3割程度だった自己資本比率も4割近くにまで引き上げた。

そうなるとなおさら、国内での新店開発という残された課題に焦点が当たる。もちろんトリドールも手をこまぬいているわけではない。カフェ業態の「コナズ珈琲」、「ラナイカフェ」、天ぷら定食の「まきの」といった新たな業態開発を急いでおり、これまで開店した店舗は好調という。現在は「まだ実験段階」(経営企画室)で、多店舗展開に向けた磨き上げを行っている最中だ。丸亀製麺が店内に製麺機を導入しているように、トリドールでは「出来たて感、手作り」へのこだわりを持っており、そういった持ち味の出し方や収益性の観点から工夫、検証を続けているようだ。

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