トヨタ、賃金ベアをめぐる労使の神経戦 会社側は「想定以上に高い」とけん制

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昨年以上にトヨタの賃上げの水準に注目が集まる(写真は2014年春闘。主要企業の一斉回答日の様子)

「想定以上に高い。そのまま応えるのは到底不可能だ」――。2月25日、トヨタ自動車の総務・人事本部長を務める上田達郎常務役員は硬い表情で記者団にこう語った。

当日、9時からトヨタ本社では2015年の第1回労使協議会が行われた。1年間の労使の総決算と位置づける同会議は経営にとっても最重要行事の1つだ。会社側からは豊田章男社長を筆頭に全役員、主要部長の約90人、組合からは鶴岡光行委員長、執行委員、職場委員長など227人が出席した。

トヨタ自動車労働組合(トヨタ労組)は今年、ベースアップ(ベア)6000円を含む1万3300円の賃上げや年間6.8カ月の一時金を要求。2月18日にトヨタ労組が申し入れ書を会社側に手渡し、この日の労使協議会を迎えた。

ベア要求は昨年の1.5倍

昨年の春闘では、トヨタ労組のベア要求4000円に対して2700円で妥結。今年の一時金要求は6.8カ月と昨年の要求(会社側は満額回答)と同じだが、ベアについては1.5倍となる6000円を要求として掲げた。

2000年代以降に「ベアは論外」という空気感が経済界に蔓延。組合側はそれを押し返すことができず、大半の企業でベアの要求さえも見送りが続いていた。しかし、デフレ脱却を目指す安倍晋三政権の強力な”後押し”もあり、昨年はトヨタを筆頭に多くの企業がベアを復活させた。

「14年はベアのない世界からベアのある世界へ展開できた非常に意味がある春闘だった。経済好循環とデフレ脱却のために、今年は昨年以上の勢いで2歩目を踏み出す必要がある」(全日本自動車産業労働組合総連合会の相原康伸会長)。昨年12月に開かれた政労使会議で、経団連の榊原定征会長が「賃金の引き上げにつなげていくことを目指して、会員企業にしっかりと呼び掛けていきたい」と発言している。

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