中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は9月6日、スマートフォンの旗艦モデル「Mateシリーズ」の新機種を2年ぶりに発売した。
標準モデルの「Mate 50」は画面に6.7インチのOLED(有機EL)パネルを搭載し、価格は4999元(約10万1300円)から。上位モデルの「Mate 50 Pro」はひと回り大きい6.74インチのOLEDパネルを搭載し、価格は6799元(約13万7800円)からとなっている。
「Mate 50シリーズは画面の大きさ、通信性能、ゲーム性能、バッテリー持続時間、カメラの表現力などでアップルのiPhoneシリーズに勝っている」。ファーウェイの端末事業部門のCEO(最高経営責任者)を務める余承東氏は、新機種の発表会でそう強調した。
しかし留意すべきなのは、Mate 50シリーズが5G(第5世代情報通信)に対応していないことだ。Mate 50とMate 50 Proは、心臓部にアメリカのクアルコムが2022年5月に発表した最新SoC「スナップドラゴン 8+ Gen 1」を搭載しながら、通信モデムが4Gにダウングレードされている。
(訳注:SoCはシステムオンチップの略称。CPU、通信モデム、画像処理回路などの基幹機能を1つのチップにまとめたもの)
「コンシューマー事業に欠かせぬ要素」
新機種の5G未対応は、アメリカ政府による制裁強化の影響だ。ファーウェイは2020年9月15日以降、自社設計のSoCの生産をファウンドリー(半導体の受託生産サービス会社)に委託することや、社外の(クアルコムやメディアテックなどの)サプライヤーから5G対応のSoCを調達することが事実上できなくなった。
その後の2年間で、中国では5Gネットワークの整備が急速に進んだ。ファーウェイの(4Gにしか対応していない)スマホは消費者ニーズにマッチしなくなり、市場シェアを大きく落としているのが実態だ。
そんななか、ファーウェイはなぜMateシリーズの新機種投入に踏み切ったのだろうか。
「Mateシリーズはかつて、ファーウェイの旗艦スマホとして名声を築いた。アメリカの制裁強化後も、同社のハイエンド機種は市場で一定の人気を保っている。そのため、ファーウェイ製品の販売店は新機種の発売を待ち望んでいた」。スマホ販売業界の内情に詳しい関係者は、財新記者の取材に対してそう語った。
また、市場調査会社ストラテジー・アナリティクスのチーフアナリストを務める楊光氏は、ファーウェイの思惑を次のように分析した。
「5G時代に4G製品を投入するのは(スマホとしての)競争力の観点からは疑問だ。しかし、スマホはさまざまなスマートデバイスの(コントローラーとして機能する)“入り口”であり、コンシューマー向け電子機器事業(の製品ラインナップ)に欠かせない要素となっている。それゆえ、ファーウェイはスマホ事業を維持し続けたいのだろう」
(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は9月6日
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