フランス「40年前の統一教会事件」が社会を変えた 日本とは大違い「カルト規制」の厳しい中身

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「検察官は、警察があまりにも早くシャトーさんを解放したことを残念に思っていたようである一方、『われわれは個人の自由、思想の自由、あらゆる哲学を信奉する自由などの原則を守らなければならない。例えそれが(統一教会創始者)文鮮明氏の哲学でも』と述べた」と、ル・モンド紙の記事は伝えている。

当時、「メディアの注意を統一教会に向けたかった」と彼女を誘拐した者たちは語った。安倍晋三元首相を殺害した山上徹也容疑者の供述と不気味なほど似ている。そして当時も、その意図は完全に成功したのだった。

カルトがもたらす社会悪が認識された

2カ月後、シャトー事件の担当判事は標的を切り替え、突如としてフランス国内の統一教会の事務所21カ所を一斉に強制捜査し始めた。これにはフランス警察の犯罪部門、経済部門、労働部門、金融部門がかかわった。

信者60人が取り調べを受け、その後解放された。2年後、統一教会のフランス事務所のトップが脱税で起訴された。同事務所は確定申告をしていなかったが、新聞販売で商業収入を得ていたのだ。

フランス国民にとって、シャトー事件は統一教会事件となった。さらに重要なことに、フランスのメディアが「プチ・ジュージュ(petit juge)」という親しみを込めて呼ぶ裁判官(その判断が全国的影響を与える地方裁判官)により、捜査が一気に拡大し、カルトがもたらす社会悪がフランス国民の間に知れ渡ったのである。このことは政界に電気ショックを与え、その影響は今日まで続いている。

フランスの制度は過去40年間、個人の自由を尊重しつつ、カルトによる犯罪行為や反社会的行為を防止・処罰しようと試みてきた。1995年には、国会委員会が173のカルトを掲載したリストを公表したが、これは後に差別的だとして廃止された。

「カルトが信者を勧誘するのは自由だ。エイリアンが世界を支配するという話を信じたければ信じても構わない。しかし、カルトはその行動によって社会悪や個人への損害を生み出すべきではない。だから今のフランスはマインドコントロールを罰することに集中している」(グラベル氏)

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