鉄道断念、長万部―小樽間「並行在来線」の現状は? 廃線特需か、列車の中もホーム上も大混雑

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こうしたことに違和感を覚える関係者は沿線にも確実におり「協議会による一方的な廃線の方針決定はおかしいのではないか」という声が上がり始めている。

共和町で、小沢駅の裏手に牧場を構える三田牧場の大田篤志牧場長は、並行在来線の経営分離同意の際には全線を第三セクター鉄道で残す話があったことから「在来線の廃止は寝耳に水」という。「新幹線開業との相乗効果を狙って駅前牧場として売り出すつもりで、アイスクリームの直売所もリニューアルオープンした」ことから、鉄道の存続について町長にも直談判したが「『道庁から示された地元負担額はどうしても出せる金額ではない』とけんもほろろだった」と道庁への不信感をあらわにする。

岩内町でも、岩内商工会議所と「伝統の漁師めし」の地域ブランド作りに携わった旅館経営者らは「バスツアーの客単価は高くてもせいぜい1万円だが、観光列車を活用したツアーであれば客単価は安くても数万円。道庁は観光業に対する理解をもっと深めてほしい」と苦言を呈する。

そして余市町では、余市観光協会の笹浪淳史会長らを中心とするメンバーで「余市駅を存続する会」を結成しホームページを新設。余市―小樽間の第三セクター鉄道としての存続に向けて粘り強い訴えを続けていく姿勢を示している。

道の体質については、「明らかに筋の通らない理由であっても道庁役人の一方的な意向によって物事が強引に押し通される傾向がある。議会などでどんなに反対意見を述べたとしても道庁が描いた枠組みからはみ出すことは一切許されない。道議会が機能しているとも言いがたくまるで中国共産党や朝鮮労働党のようだ」と形容する道議会関係者もいる。

もともと並行在来線経営分離への反対論が根強かった余市町が経営分離に同意した経緯についても「嶋保前町長が道庁から派遣されていた副町長の意向に逆らうことができず『どうにか残すから』と強引に押し切られた」と余市町関係者は証言する。

倶知安駅から小樽駅へ

15時17分に倶知安駅を発車する小樽行はH100形の2両編成となり、座席を満席にして倶知安駅を発車した。

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かつて岩内線が分岐していた小沢駅を過ぎ稲穂峠越えの区間へと入る。上り勾配を時速60kmほどで駆け上がり、頂上部を過ぎると列車は時速70~80kmで一気に余市平野へと駆け降りる。

ここまで来ると小樽はもう近い。余市駅からはニッカウヰスキーの観光を終えた多くの観光客を乗せ車内は立ち席客も出るほど混雑に。そして、倶知安駅から1時間10分の乗車で列車は終点の小樽駅へと到着した。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。BSフジサンデ―ドキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」番組監修。

 

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