消えた「数学C」が復活、奇妙すぎる日本の教育改革 脱「ゆとり」を提唱した数学者から見た教育行政
大学入試の作問側と受験産業側が一線を画すからこそ公平な入試が成り立つのであって、試験が実施される前に「正解」を一部企業に教えたりすることは論外である。一時的にアルバイトの大学生を雇って採点させたりすることは、大規模学力調査の統計データ収集ならばともかく、受験生一人ひとりの人生がかかっている試験では論外である。
そして、この問題は一旦動き出してからでは手遅れで、速やかにストップをかける必要性を感じ、共同通信47NEWSで上述の理由などを詳しく述べた次第である。その後、部分的に記述式の数学問題を導入することは見送られ、2021年度から大学入学共通テストは開始された。
暗記だけに偏りすぎている学習スタイル
2020年末に筆者は『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)を上梓し、理解軽視の暗記だけの学びに偏りすぎている最近の算数・数学の学習スタイルに対して、憂慮の念をさまざまな角度から述べた。
その傾向は大学数学の入門領域にも波及していることから、来年3月に本務校の定年退職をもって大学(専任)教員人生45年の幕を閉じる記念として、理解と例を重視した『新体系・大学数学入門の教科書(上下)』(講談社ブルーバックス)を今年6月に上梓した。
この書の出版によって、『新体系・中学数学の教科書(上下)』(2012年、同上)、『新体系・高校数学の教科書(上下)』(2010年、同上)を経て『今度こそわかるガロア理論』(講談社)に至るまでの大河が完成したことになる。
とくに、円の面積が円周率×(半径の2乗)であることや代数学の基本定理というものの厳密な証明を6月に出版した書に入れることができた点も大きい。
もっとも、ここまで来た経緯を振り返ると、『新体系・高校数学の教科書(上下)』の出版直後に、2010年4月10日号と17日号の週刊東洋経済で、元外交官で作家の佐藤優さんがその書を詳しく紹介していただいたことが大きな励ましになったので、ここで改めて感謝の意を表したい。
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