環境悪化の中、三菱モルガン上期M&A助言で首位 取引総額減少でも日立物流など大型案件が寄与

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2022年上期(1-6月)の日本企業関連の合併・買収(M&A)助言ランキング(金額ベース)で、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が首位となった。急激なインフレなど、マクロ経済環境の悪化を背景に取引総額が減少する中、日立物流など大型案件の獲得が寄与した。

ブルームバーグのデータ(23日現在)によると、22年上期に日本企業が関わったM&Aは、取引総額が前年同期比2割減の約12兆円。件数も17%減の2158件と低迷した。三菱モルガンM&Aアドバイザリー・グループ統括責任者の竜口敦氏は、「昨年から一転してなかなか難しい市場環境だった」と振り返る。

日立製作所は日立物流株を売却するSource: Bloomberg

三菱モルガンは上期最大の案件となった米投資ファンドKKRによる日立物流の買収で同社の財務アドバイザー(FA)を務めたほか、横浜ゴムによるスウェーデンのトレルボルグのタイヤ子会社買収案件で売却側に助言するなど、比較的大型の案件を着実にこなした。

竜口氏は上期のM&A市場について、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたサプライチェーンの混乱や急激なインフレ、利上げなどの悪材料が顕在化し、先行き不透明感が大幅に増したと分析。新型コロナウイルス禍への適応が進み、マクロ環境も改善して日本企業が「案件を実行に移す動きが顕著」だった前年同期からは様変わりしたという。

ただ、竜口氏は「日立物流の案件が象徴しているように、この不安定な状況でもPE(プライベートエクイティー、未公開株)ファンドは非常に元気だったという印象だ」と話す。同案件はKKRが株式公開買い付け(TOB)などを通じて、大株主である日立製作所の保有分も含め、最終的に日立物流株の90%を取得するという内容だった。

同様に日立物流のFAを務めたUBS証券M&Aアドバイザリー部統括責任者の安藤浩二氏は、合意までの交渉も含め発表内容が詳細で、「開示の透明性という意味でも注目に値する」と指摘。市場に異論もある親子上場に似た関係の変化に向け、「日立製作所、日立物流双方の株主への説明責任を果たそうという試みだった」と評価した。

日本勢優位の中で、純粋な外資勢としてトップ5に入ったのはUBSのみ。外資はクロスボーダー案件に強みを持つが、新型コロナ禍に伴う渡航制限などが逆風となった。竜口氏は、「特に製造業の案件などで工場を全く見ずに買収するのは現実的には難しい」と説明する。

買収側企業トップは常連のソフトバンクG

買収側企業ランキング(金額ベース)では、投資会社で上位常連のソフトバンクグループが取引総額2兆円でトップだった。事業会社として唯一トップ5入りしたソニーグループは、米ゲーム会社バンジーを約37億ドル(現在のレートで約5100億円)で買収したほか、米エピックゲームズに3度目の出資を行った。

東洋証券の安田秀樹アナリストは、米マイクロソフトが米ゲーム大手アクティビジョン・ブリザードを買収すると発表した約2週間後にソニーがバンジー買収を公表するなど、米ゲーム業界は「買収合戦の様相を呈している」とし、買収競争は今後も続くとみている。

安田氏は、コロナ禍の巣ごもり需要で成長分野と目される中、円安もあり「海外企業による日本のゲーム関連企業への出資・買収も増えそうだ」と予想する。5月にはサウジアラビアの政府系ファンドによる任天堂株式の保有(5.01%)が判明した。

三菱モルガンの竜口氏は下期(7-12月)について、「マクロ環境の予見確実性が増すに連れ、水面下の動きを含めたアクティビティーはかなり活発になっていく」とみている。中でも国内企業のノンコア事業売却・再編は、「マクロ状況に左右されず、比較的安定的に案件が続く」との認識を示した。

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著者:谷口崇子、浦中大我

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