NFTで「成功できる企業」「できない企業」の決定差 存在感を示せる企業が共通して持っているもの

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新技術としての目新しさが失われ、ユーザー数も飽和してしまえば、取引の活性化が失われ、そこから先の発展があまり望めなくなります。現在のNFTは、ほとんどの場合においてファンビジネスですから、ファンが途切れると一気に価値が下がる危うさがあります。

また、NFT化したすべてのものに数千万円の価値がつくようなことはありえません。そうした高値がつくのはごく一部の目立つ例外です。取引可能な価値を持つものはどれかを判断することも大切です。コンテンツを供給する側と、売買するユーザー、双方がきちんとメリットを得続けている状態にあるかを、つねに見極めていく必要があるでしょう。

NFTそれ自体の価値の先にあるもの

ただし、金銭的なものではなく、NFTの仕組み自体は、DAO(分散型自律組織)やトレーサビリティなどとの掛け合わせがうまく成功すれば、応用できる用途はまだまだあるでしょう。

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NFTアートなど、NFT化されたコンテンツそれ自体の価値よりも、それらを購入することで得られるコミュニティーへの参加権やプレミアム感のほうに比重が移っていく可能性もあります。

日本には有望なIPを保有している企業が多数あります。NFTという新しいツールを既存のアセット(資産)に組み込むことによって、仲介業者に高い手数料を払わずとも、世界中の顧客に作品やプロダクトが届けられる可能性が広がります。

日本企業が世界のマーケットで新しい収益源を発見していける可能性は十分にあるはずです。

山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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やまもと やすまさ / Yasumasa Yamamoto

東京大学で修士号取得後、NYの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。フィンテックやAI(人工知能)などで日本企業のデジタル活用を推進し、テクノロジーの知見を身につける。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員。京都大学経営管理大学院客員教授。日本経済新聞電子版でコラムを連載。著書に、『シリコンバレーのVCは何を見ているのか』(東洋経済新報社)、『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SBクリエイティブ)、『アフターChatGPT』(PHP研究所)、『テックジャイアントと地政学』(日本経済新聞出版)など。

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