「こうした専門診療科での治療で改善されない方や、手術を希望されない方が、ペインクリニックで“ほかの治療を試したい”と言って来られます。薬(痛み止め)を減らすことができるので、アメリカでは麻薬の乱用を減少させる効果があるとして、期待が高まっています」(小林医師)
ペインクリニックの診療の流れは?
ペインクリニックとは、痛みの原因となっている神経、あるいはその周辺に注射針を挿入して局所麻酔薬などを注入することで、痛みの信号が脳に伝わるのをブロック(神経ブロック)するという治療法。大事なのは、痛みの性質を見極めること、つまり痛みの診断だという。
「患者さんの訴える痛みが急性のものか、慢性的に生じているものか、炎症の痛みなのか、神経の痛みなのか、診察をしながら探っていきます。このほか、うつ症状など精神的な症状についても診ていきます。痛みの診断によって使う薬も治療方針も変わります」(小林医師)
もう1つ大事なのは、「痛みがどれくらい強いか」を評価することだ。
痛みの評価する手法にはいくつかある。
代表的なのが「NRS(Numerical Rating Scale)」と呼ばれるもので、想像できる最大の痛みを10点として強度を評価する。このほか、22の質問項目で今の痛みの強度の評価および、痛みの種類を把握する「マクギルペインスケール2」や、顔の表情によって痛みを患者に選んでもらい評価する「フェイススケール」、皮膚に電流を流して痛みの度合いを数値化する「ペインビジョン」という測定機器を使うこともある 。
実際にどんな治療を行っていくのか。小林医師に聞いた。
「ペインクリニックの手技で最もポピュラーなのが、『星状神経節ブロック』です。これは、交感神経をブロックすることを目的に行います」
星状神経節ブロックは、前側の首の付け根に局所麻酔薬を注入する神経ブロックで、頭頸部や顔面、上肢の痛み(顔面神経マヒや緊張型頭痛、片頭痛、肩こり、帯状疱疹後の痛みなどに有効だ。
私たちの体には神経が張り巡らされている。その代表的なものが交感神経と副交感神経からなる自律神経だ。ストレスなどが原因で長期にわたって交感神経が副交感神経よりも強く働きすぎていると、痛みが長引く要因になると小林医師。
「このような場合に星状神経節ブロックをすると、薄皮をはがすようにだんだん痛みが和らいでいき、精神面も安定してきます」
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