神経ブロックは星状神経節ブロック以外に数十種類もある。代表的なのは、腰下肢痛に対する硬膜外ブロック、三叉神経痛に対する三叉神経ブロック、筋肉の痛みなどに対するトリガーポイント注射などだ。
「とにかく筋肉の痛みをなんとかしたい場合は、トリガーポイント注射が有効です。筋肉のこっている部分をエコー(超音波画像)で見ると白く硬くなっています。そこに注射を打って筋肉のこわばりをほぐし、血流を改善します」(小林医師)
痛みが生活の質を下げる理由
痛みの感じ方には個人差が大きいだけでなく、情動面にも左右される。このため心理・社会的要因を含めて評価することもある。このため、情動と痛みは切り離せないことから、臨床心理士や公認心理士などがカウンセリングを行っている施設もある。
「NRSで毎回0か10の極端な評価をつける方などは、情動の影響が痛みに反映されやすい傾向を感じます。このようなケースなど、検査で明らかな原因がわからない場合は、神経ブロックそのものが治療だけでなく、診断の手段となりえます」
神経ブロックには健康保険が適用され、1回数百円から数千円(3割負担の場合)までさまざまだ。痛みの状態によっては通院する必要がある。
このように、ペインクリニックは1人ひとりの患者に合わせた診療を行い、回復の程度によって注射の種類や頻度などを調節していく。日常生活に支障がない程度まで痛みをコントロールできるようになるのが目標だ。
一方で、冒頭で紹介したとおり、痛みは体のSOS信号でもある。
「緊急性を要する重い病気の徴候を“レッドフラッグ”といいますが、当科で検査をして、レッドフラッグに該当する場合は、適切な診療科を速やかにご紹介します」(小林医師)
痛みが落ち着いてくれば眠れるようになるし、気持ちも落ち着いて日常生活を送れるようになる。つらい痛みはがまんしないで、一度、ペインクリニックで相談してみるのも手かもしれない。
最後にペインクリニックの治療と、鍼灸やマッサージとの違いについて、小林医師に聞いた。
「ペインクリニックも鍼灸も、細い針を使うところは変わりませんので、違いはわかりにくいかもしれませんね。鍼灸、マッサージにもそれぞれ良さはあります。しかし、
ただ、どちらも針を刺すから同じもの、ペインクリニックと鍼灸院の両方に通っても大丈夫、というわけにはいかない。
「もしも何か合併症が起こったときに、その原因を突き止めるのが難しくなります。両方に一緒に通うのは控えましょう」(小林医師)
(取材・文/熊本美加)
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小林玲音医師
東京都出身。2005年に昭和大学医学部を卒業、2007年より同大学麻酔科学講座に在籍。2011年同大学大学院(博士課程)にて学位取得。手術室での麻酔管理のほか、ペインクリニックにも従事し、痛みに対する神経ブロック療法、できるだけ体に傷を残さずに治療するインターベンショナル治療の研究に携わっている。
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