ペロシ訪台を熱狂歓迎しなかった台湾の事情 訪台後に蔡英文政権への支持率が低下した理由

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国際政治学者で京都大学教授だった故・高坂正堯氏は、国際政治は①価値の体系、②利益の体系、③力の体系、の3つの体系から成りたっていると書いた。台湾問題が米中対立の核心的な争点になったいま、台湾民意もまたこの「3つの体系」の相克の中を漂っているように思える。

アメリカの強力な台湾支援が、民主の「価値の体系」と、武器支援の「力の体系」を表すとすれば、それが中国の軍事的、経済的圧力という「力の体系」の反応を招いた。それが、結果的に「台湾の利益」になるかどうか、台湾民意は難しい判断を迫られているという意味だ。

台湾政治の「振り子」理論

故・李登輝総統による台湾政治の「民主化」「台湾化」(脱中国化)以来、台湾政権は中国との政治的距離という力学の中、「振り子」が振れてきた。国民党による権威政治が終わり、2000年に民進党、陳水扁政権が誕生。陳氏は露骨な「台湾独立」政策を進め、2008年に馬英九政権の誕生という国民党政権復活の「揺り戻し」をもたらした。

馬英九政権が、台湾統一に向けた「政治協議」を急ぐ中国のイニシアチブと共振し、2015年に習近平共産党総書記とのトップ会談を実現すると、今度は、振り子は「反統一」に振れ、2016年には民進党政権が復活した。

台湾は、2022年11月の統一地方選挙という事実上の「総統中間選挙」を経て、ポスト蔡英文を決定する2024年の総統選挙に焦点が移る。中国は軍事演習終了直後の2022年8月10日、統一に強い意欲を示す「台湾白書」を発表した。統一をめぐる、中国と日米台とのせめぎ合いが激化する中、「振り子」がどう振れるかが最大の注目点だ。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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