ペロシ訪台を熱狂歓迎しなかった台湾の事情 訪台後に蔡英文政権への支持率が低下した理由
日本では報じられなかった「内幕」を、多くの台湾人が認識していたことになる。「熱狂的歓迎」ではなかった理由の1つはそこにある。日本で報じられたような「熱狂的歓迎」とは程遠い。
日本では、台湾問題が米中対立の核心的争点になるにつれ、反中嫌中感情が「翼賛世論」となり、その裏返しとして「親台湾」情緒が醸成されてきた。日本の一部にある「親台」情緒が、ともすれば台湾に「かくあるべし」と投影する誤った認識のありさまを、この世論調査は見事に教えている。
「中国の軍事演習は怖くない」が8割
世論調査結果に戻る。中国の最大規模の軍事演習(2022年8月4~7日)に対する反応では、「恐れていない」が78.3%と、「恐れる」(17.2%)を圧倒した。これは台湾人の多くが、演習が中台衝突など「有事」に発展しないと冷静に判断したことを示している。その理由は、中国側が事前に演習目的を、米台への「威嚇と警告」と通知したこと。それに加え台湾人の「軍事演習慣れ」もあるかもしれない。
台湾の将来についても調査は聞いている。中国が主張する「一つの中国」原則に「賛成しない」は81.6%で、「賛成」の8.8%を大きく上回り、また50%が「台湾独立」を支持した。「現状維持」支持は25.7%で、「統一」支持は11.8%という結果だった。独立支持は2022年4月の前回調査時の52.8%から2.8ポイントの微減、「現状維持」は22.4%から3.3ポイント上昇し、「統一」支持は微増にとどまった。
最も興味深いのは、蔡英文政権への支持率の変化だ。蔡政権の政策への「不支持」は、2022年7月の前月調査比で7ポイント上昇し41%になった。「支持」は46%と、同じく7ポイント下落する。この数字は、ペロシ訪問と中国の軍事演習が蔡政権の追い風にならなかったことを示している。
調査に当たった台湾民意基金会の游盈隆(ゆう・だいりゅう)理事長は「強力な外部支援の下では、支持率が上昇するのは当然なのだが、逆に下落した。これは世論調査史上初の奇怪な現象」と驚きを隠さない。游理事長は支持下落の要因として、蔡氏の国家安全に対する指導表現への不満を挙げる一方、民進党籍の新竹市長である林智堅氏の修士論文「盗作」疑惑を内政要因として挙げている。
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