日本で「両利きの経営」が大注目された根本理由 実務家が学ぶべき「経営理論」という共通言語

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入山:島耕作は作品としては面白いけど、あのモデルは確かに問題ですね。特に会長になってから、社長を3人くらい変えていますし(笑)。

変化が激しい時代には、冨山さんが行ってきたようなコーポレート・トランスフォーメーション(CX)が必要だという危機意識があり、何か指針がないかと求めているときに、ピタッとはまった言葉が「両利きの経営」だったと思うのです。

日本のコンテクストに落とし込む

入山:それから手前味噌ですが、冨山さんと僕でそれぞれ書いた解説を載せたことも大きいかなと(笑)。実は、最初にこの原書を読んだとき、良い本ではあるし、言っていることはわかるけれど、事例集みたいで売りにくそうだな、と。そこで、日本のコンテクストに落として、両利きの経営の重要性を学術と実務の両面から詳しく解説したことは良かったと思います。解説から読み始めている人も多いみたいですし。

冨山和彦(とやま かずひこ)/経営共創基盤(IGPI)グループ会長。1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学MBA、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。共著に『2025年日本経済再生戦略』などがある(撮影:尾形文繁)

冨山:翻訳書で巻頭と巻末の両方に解説を載せる本は珍しいけれど、最初に入山さんを持ってきたのは正解でした。アカデミアの広大な世界の中で、この本がどういう位置づけかわかると、読者は心の準備ができます。

それがないと、どんな内容かわからずに映画を見ているのと同じで、恋愛映画と思っていたのに、実はホラー映画だったりする。巻末の僕の解説は、現実の経営でどんな意味合いかを説明しています。

入山:確かに、私の巻頭の解説はそういう役割ですね。そして巻末で、冨山さんが言っているならそうかと、お墨付き感を与えてくれますね。

冨山:それから、原書の『Lead and Disrupt』というタイトルを「両利きの経営」にしたのも正解ですね。

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