話題の新作バスケドラマが壊した大物同士の友情 80年代レイカーズ黄金期を描いた作品で物議

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さらに、このドラマは、もうひとつの人間関係も壊している。原作のノンフィクション本『Showtime: Magic, Kareem, Riley and the Los Angeles Lakers Dynasty』を書いたジェフ・パールマンとレイカーズの関係だ。

ジェリー・バスの娘で現在のレイカーズのプレジデントであるジーニー・バスは、パールマンの書いた本を気に入っており、パールマンはレイカーズの人たちと仲が良かった。しかし、マッケイは、このドラマを作るにあたり、ディック・チェイニー元副大統領についての映画『バイス』でもそうしたように、本人たちの話は聞かないという選択をした。キャストは自分が演じる人物に会わなかったし、プロデューサーや監督もレイカーズから許可も意見ももらっていない。自分たちの話でありながら、それがどう語られるのか、レイカーズにはまったくわからないのだ。

そうやってクリエイティブ面で自由を得る一方で、事実をできるだけ忠実に描きたかったことから、マッケイらはパールマンを頼りにした。脚本執筆にはたずさわっていないものの、パールマンは、脚本や編集された映像に対して意見を言っている。それを知って以来、レイカーズの関係者は、パールマンと疎遠になった。

登場人物の造形を脚色

そして、放映が始まり、自分たちの目でドラマを見てから、おそらく彼らはもっとパールマンに反感を持つようになったに違いない。とりわけクラークが演じるジェリー・ウエストが本人とまるで違うと、彼を知る人々から苦情が出たのだ。ドラマの中で、ウエストは、かっとしてゴルフクラブを壊したり、トロフィーを窓に投げたりするが、本人は温厚な人で、そんな行動を取ったことはないという。

自分の描かれ方にも不満を持つカリーム・アブドゥル=ジャバーは、「鬱を抱えていたことをオープンに話してきたウエストを思いやることなく、面白おかしく描くのは残酷だ」と、自分のコラムの中で批判している。

それを受けて、HBOは、「よりドラマチックにするため、事実や実際に起きたことにフィクションの要素を加えることを、HBOは長いことやってきました。『ウイニング・タイム〜』はドキュメンタリーではありませんが、ここで描かれることは綿密なリサーチと信頼できる情報源にもとづいています。バスケットボールの歴史の重要な部分を語るこのドラマを作ったクリエーターとキャストを、HBOは支持します」と声明を発表した。

少なくとも、このドラマは、HBOとマッケイの関係を壊すことはなかったようだ。マッケイが手がけるもうひとつのHBOのドラマ『メディア王〜』は、来月のエミーでも、また多数の受賞が期待されている。この生き残った関係から、さらに多くの優れた作品が生み出されていくことを願うばかりだ。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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