なぜ今?岸田首相「8月10日に電撃人事」の裏事情 自分で決める“ニュー岸田"大変身をアピール

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安倍派がらみの人事では、故安倍氏の腹心とされた萩生田光一経済産業相が注目の的だ。岸田首相は7日に萩生田氏と会談した結果、留任か党4役への起用を検討する構え。萩生田氏の要職での処遇で、党内最大派閥の安倍派を重視する姿勢を示す狙いからだ。

ただ、萩生田氏が8日の記者会見で続投への意欲を示し、「(自分は内閣の)骨格ではなかったのか」と発言したことが波紋を広げた。萩生田氏は旧統一教会との「深い関係」(官邸筋)が取りざたされているだけに、岸田首相がこの発言をどう受け止めるかによって、他の党・内閣人事への波及も想定されるからだ。

その一方で、体調不安が目立つ故安倍氏実弟の岸信夫防衛相や、安倍氏側近だった高市早苗政調会長、旧統一教会との関わりで「問題ない」と発言した安倍派幹部の福田達夫総務会長は交代させるとみられる。さらに、安倍氏銃撃事件の最高責任者である二之湯智国家公安委員長(内閣府特命相)も交代させる方針だ。

「岸田首相の野望が国民の失望呼ぶ」との声も

そうした中、ほとんどの政府与党幹部が想定していた「9月前半の人事断行」を岸田首相が独断専行の形で覆したことへの反発も根強い。

とくに、9月27日の安倍氏国葬までは「喪中」を理由に集団指導体制を続ける党内最大派閥の安倍派には「派分裂を加速させる狙いがある」との疑心暗鬼が広がる。

また、党内反主流勢力と位置付けられる菅グループや二階派も「人事をごり押しすれば、逆に政権の求心力を失う」(二階派幹部)と牽制。これに対し、岸田首相周辺も「人事で決断力を行使しても、コロナや物価高騰への対応が後手後手では、国民の支持は得られない」との不安を隠さない。

岸田首相は、9月27日の安倍氏国葬前後の「国葬外交」を取り仕切ることで、内外に「世界のキシダ」をアピールすることを狙うとみられる。しかし、最悪の事態が想定されるコロナ禍への対応や、一触即発状態となっている「台湾有事」などの展開次第では、「岸田首相の野望が、国民の失望を呼ぶ可能性」(安倍派幹部)を指摘する声も少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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