脱炭素社会の実現に向けた社会的課題への取り組みが求められる中、大手ゼネコン各社は環境問題への対応をビジネスチャンスとしてとらえている。
工場内に足を踏み入れると、ほんのりと杉の香りが漂ってきた。今年4月。埼玉県本庄市に完成した、情報通信システムなどを展開するOKIの本庄工場には、外壁や柱などに無数の木材が散りばめられている。工場内における木材使用量は206㎥。地元で産出した秩父杉を使用している。
工事を請け負ったのはスーパーゼネコンの大成建設だ。木質系材料と鋼板を組み合わせた耐震、耐風、防火などの同社の独自技術を全面投入した。地上2階建て、延べ床面積約1万9000㎡のこの新工場は、木材を使用していることだけでなく、省エネ性能に優れていることも特徴だ。
再エネ活用でエネルギー消費は実質ゼロ
同工場は再生エネルギーの活用などにより、建物で使うエネルギー消費量を実質ゼロとする「ZEB」(ゼロ・エネルギー・ビルディング)の認定を大規模生産施設として国内で初めて取得した。また、大成建設は年間のエネルギー消費量について収支ゼロを目指す工場を「ZEF」(ゼロ・エネルギー・ファクトリー)と定義しており、その適用第1号にもなった。
大成建設は2018年から、木質系材料と鋼板を組み合わせたうえで意匠性と構造性能も両立させた耐震構法などを「T-WOODシリーズ」に追加拡充し、建物の新築、リニューアル工事に適用してきた。
今後は10階建て程度の中小規模ビルにも活用し、将来的には高層ビルへの適用も目指す。個々のビルだけでなく、歩道橋などに木材を使用するなど都市空間全体への活用も視野に入れる。
同社がビルの木造化事業を推進する背景には、建物を木造化することで大気中の二酸化炭素(CO2)削減に貢献するという狙いがある。「CO2貯蔵の長期化を図るために、都市の中に森をつくるようなイメージでビルの木造化を進める。そうすることで、建築価値の向上、ひいては企業価値の向上を目指す」(大成建設・設計本部の梅森浩設計担当部長)。
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