「アキュラ撤退」明暗わかれる中国の高級車市場 欧米メーカー+新興メーカーのBEV戦略の中で

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ただし、昨今は半導体やコロナ禍による部品不足の影響も大きく、2022年1~6月の販売台数は33.4%減の8万7300台となっている。同じく輸入車となるポルシェ(ドイツ)も好調を維持しており、2021年の販売台数は現地生産を行うジャガーランドローバー(イギリス)に接近した。

一方、中国で現地生産する日産の高級ブランド、インフィニティはレクサスより3割ほど安価であるものの、2021年は前年比46%減の1万3500台となり、ピークであった2017年のわずか3割まで落ち込んだ。

中国でも生産されるインフィニティ「QX60」(写真:日産自動車)

販売台数の低迷は、ディーラーの販促意欲に影響を与え、販売網の縮小も余儀なくされた。2021年末時点の拠点数を見ると、所得の高い中国東部地域では、ドイツ系3ブランドが計750店舗以上であるのに対し、レクサスは約160店舗、インフィニティはおよそ70店舗にすぎない。

インフィニティは販売車種が少なく、電動車両の投入も遅れている。このままいけば、“ニッチな高級車ブランド”とのレッテルを貼られる恐れもあるだろう。

厳しくなる競争に日系メーカーは

急激にBEVシフトが進む中国では、最新の技術を搭載する高級BEVが登場したことにより、高級車市場ではガソリン車ブランドとBEVブランドの明暗がはっきりとわかれた。アキュラの撤退やインフィニティの低迷から、電動化の潮流下で高級ガソリン車ブランドの厳しさがうかがえる。

2040年に「脱エンジン」の目標を掲げたホンダは、アキュラの経営資源を電動化シフトに投入し、「中国で2030年以降に発売する新車をすべて電動車両にする」と掲げている。日産は、2021年に長期戦略「Nissan Ambition 2030」を打ち出し、2026年度までにEVとe-POWER搭載車を中心とする「電動車の販売比率を中国で40%以上にする」と発表した。

各社がしのぎを削る中国高級車市場では、生産能力からドイツ系ブランドが圧倒している。高級BEVの躍進に加え、現地生産シフトの流れが進む今、日本の高級車/高級ブランドにとって、競争はより一層厳しいものとなってきている。

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湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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