「アキュラ撤退」明暗わかれる中国の高級車市場 欧米メーカー+新興メーカーのBEV戦略の中で

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また、その流れにキャデラック(アメリカ)やボルボ(スウェーデン)も追随し、高級車市場の競争が激しさを増している。

しかし、2022年1~6月の販売台数を見ると、メルセデス・ベンツとBMWの販売台数はともに前年同期比19%減。アウディも24%減となり、高級車市場に占める3社のシェアは、2018年の70%から、2022年1~6月は61%へと減少している。

2つめの変化は、高級BEVブランドの好調だ。ファーストカー向けのガソリンエンジン車の販売台数が減っている中で、その減少分を埋めるために高級車販売のさらなる増加が期待され、各社はBEVの投入で需要の取り込みを図ろうとしている。

高級車市場に変化をもたらしたが、大都市における「中大型・高級BEVブーム」だ。その火付け役はアメリカのテスラで、上海市の自社工場「ギガファクトリー3」で2020年からセダンの「モデル3」を、2021年にはSUVの「モデルY」の生産を開始し、販売を伸ばしている。

テスラ「モデル3」(写真:Tesla)

テスラは、ギガファクトリー3の生産能力を2021年の45万台から2023年には100万台に引き上げるという。

また、生産コストの約4割を占める車載電池を中国の電池最大手CATL製「リン酸鉄電池」に置き換えることで、驚愕の値下げが可能となり、ドイツ系高級BEVと競合する武器となる。

中国の新興メーカーも高級BEV市場に参入

2022年3月に「ET7」を投入した蔚来汽車(NIO)に続き、理想汽車(Li Auto)は2022年6月21日、小売価格45.98万元のレンジエクステンダー式(R-EV)の高級SUV「理想L9」を発表。小鵬汽車(Xpeng)も大型SUV「G9」を8月に発売開始する予定だ。

NIO「ET7」(筆者撮影)

これら中国の代表的な新興メーカー3社が投入したフラッグシップの位置づけの電動車両は、いずれもソフトウェアと通信機器を搭載し、自動運転やエンターテインメントなどの機能を使いやすくした“コネクテッド・スマートカー”だ。

当然、ドイツ系メーカーもそろってBEVを発売し、既存ユーザーの電動化ニーズへの対応を急いでいる。ダイムラーは、今年4月、吉利汽車と合弁で西安市に年産能力30万台のBEV工場を稼働させ、小型EV「Smart #1」の予約受注を開始した。

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