[Book Review 今週のラインナップ]
・『橋川文三とその浪曼』
・『気候民主主義 次世代の政治の動かし方』
・『ミスを最大のチャンスに変える リカバリーの技術』
・『明代とは何か 「危機」の世界史と東アジア』
[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]
・『外国人差別の現場』
・『帝国日本のプロパガンダ』
・『やらかした時にどうするか』
・『山はおそろしい』
評者・関西大学客員教授 会田弘継
近代日本の超国家主義者やテロリストらの精神を探る論考を数多く残し、作家の三島由紀夫にも信頼された異色の政治思想史家、橋川文三(1922〜83年)の精神的格闘をたどる長編評論である。
今年が生誕100年に当たる橋川については近年、団塊世代の門下生、宮嶋繁明による浩瀚(こうかん)な評伝が出版されるなど、再評価の動きがある。団塊ジュニア世代に当たる本書の著者や政治学者・中島岳志らの橋川見直しが進むことの意味合いも考えてみたい。
再評価進む異色の思想史家 4泰斗との精神の格闘たどる
本書は、日本浪曼派の文芸評論家・保田與重郎、戦後を代表する政治学者・丸山眞男、民俗学者・柳田国男、三島の4人に対する橋川の思想的な共鳴、確執、反発を丹念に描き、橋川だけでなく戦後日本が「敗戦」をどう内面化しようとしたか、その精神史も描きだす試みだ。
橋川の代表作にして原点といえるのは『日本浪曼派批判序説』(1960年)である。戦争を鼓舞した「神がかり」の文化的錯乱とみなされた日本浪曼派、なかでも保田と思想的に格闘した書だ。
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