[Book Review 今週のラインナップ]
・『「歴史の終わり」の後で』
・『中国減速の深層 「共同富裕」時代のリスクとチャンス』
・『日本の知、どこへ どうすれば大学と科学研究の凋落を止められるか?』
・『豪商の金融史 廣岡家文書から解き明かす金融イノベーション』
[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]
・『デジタル空間とどう向き合うか』
・『愛国の起源』
・『スキを突く経営』
・『世界珍食紀行』
評者・ジャーナリスト 中岡 望
1989年、著者フクヤマは論文「歴史の終わり?」を発表した。
その主題は、民主主義、自由経済と共産主義とのイデオロギー的相克が、ソビエトの崩壊により前者の勝利に終わるというもの。これはイデオロギーの対立が歴史発展の原動力と考えるヘーゲル的な歴史観の終焉を意味した。
民主主義、自由経済の勝利こそフクヤマの予言どおりになったが、その後の展開は違った。米国での同時多発テロ、イスラム過激派の台頭、東欧諸国の民主化失敗、世界金融危機、権威主義国家の台頭──。世界は再び政治体制の競合の時代に入り、多くの論者は「歴史はよみがえったのか」と問い始めた。
本書は、そうした問題意識に基づいた、ノルウェーの思想家によるフクヤマへのインタビューをまとめたものだ。
歴史は終わらなかった その理由を考え、次に生かす
「歴史の終わり」は間違っていたのかと問われて、フクヤマは「私はすでに『政治の起源』『政治の衰退』で『歴史の終わり』の見解を修正して、政治が衰退する現象を含めました。つまり政治体制は発展の過程で後退することもあります」と答える。今まさに「民主主義の後退」が起こっている。「ロシアと中国はいまや確固たる権威主義国家として影響を与えていますし、既存の民主主義諸国の内部ではポピュリズムが台頭しています」。
「自由民主主義諸国の権力と制度のバランスがいかに危ういのかを知って衝撃を受けた」と見立てが甘かったことを正直に認めている。
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