トヨタ悩ませる生産制約、幻の「年間1200万台」 何度も減産、サプライヤーとの間に吹く隙間風

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だが、サプライヤーにはそういった「飛び道具」はない。部品数量の減少はそのまま経営を直撃する。トヨタは仕入れ先の原材料費の高騰分については「基本的にはわれわれがみる」(熊倉和生・調達本部長)と話し、部品の購入価格引き上げが進み始めてはいる。だが、工場の稼働率が高まらないサプライヤーは厳しいままだ。

トヨタは減産や資材高騰を考慮して4〜6月に見送った部品の値下げ要請を、生産数量の回復を前提に7〜9月に再開した。だが、仕入れ先からは「生産数量が予定どおりになってから原価低減を求めるのが筋」との反発も出た。

そうした声も踏まえ、「サプライチェーンをしっかり守るため」(熊倉本部長)に、10月〜来年3月については値下げ要請の見送りを決めた。生産をめぐる混乱が続いている。

トヨタの実務能力に疑念の声も

そもそも1100万台もの計画が当初示されたことに、「トヨタの生産管理の実務能力が落ちているのではないか」と疑念の声も上がる。独立系サプライヤーの幹部は、「1100万台の計画に対応するためには設備投資が必要になるのに、仕入れ先に示すのがあまりにも直前すぎる」と話す。

トヨタがお家芸とする、極力在庫を持たないジャスト・イン・タイムは競争力の源泉だ。原価低減も正確な生産台数予想があってこそのものだ。しかし、急減産時にはジャスト・イン・タイムの抱えるリスクの多くを仕入れ先が引き受ける形になった。

「異常な状態がずっと続くと、大事にしなければいけない安全や品質がおろそかになって、あってはいけないことが起こってしまうのではないかと危惧する」。今春の労使交渉では組合からこんな指摘も出た。トヨタは生産管理のあり方を見直したうえで、仕入れ先との強固な信頼関係をつくり直す必要がある。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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