トヨタ悩ませる生産制約、幻の「年間1200万台」 何度も減産、サプライヤーとの間に吹く隙間風

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生産計画の変更で準備費用が過剰になった場合、費用を一部負担するなどとした。サプライヤー各社は「急な生産変動があったときに要員計画の変更など対応がしやすくなる」と好意的に受け止める。

赤字のサプライヤーも

ただ、トヨタとサプライヤーの間に吹いた隙間風は容易に収まることはなさそうだ。970万台という「身の丈」の生産台数ですら、達成が難しそうだからだ。半導体不足に加え、上海の都市封鎖による部品供給制約が響いた形で、最近も計画未達が相次いでいる。

トヨタは7月28日に6月の生産実績を公表。22年4~6月の世界生産台数は212万台だった。3月に発表した4〜6月の見通しである240万台から約30万台も下振れし、前年の同じ時期と比べ6%減った。海外生産は前年を2%弱上回ったが、国内生産は2割を超える大きな落ち込みとなった。

減産はサプライヤーの業績を直撃。7月28~29日にトヨタ系列の部品メーカー13社が発表した22年度第1四半期(4~6月期)決算は、営業損益で5社が赤字、8社が減益となった。

ボディ部品やマフラーを製造するフタバ産業は、国内の生産数量が計画を2割下回ったことが響き、営業赤字に転落。大橋二三男取締役は「トヨタの生産計画は2週に1回ぐらい下方修正になった。準備した要員のキャンセルができず、労務費負担がダメージになった」と語った。

前期比で8割もの大幅営業減益になったトヨタ紡織の岩森俊一取締役も「雇用の維持と減産への対応に大変悩んだ」と振り返った。

トヨタは8月4日に第1四半期決算を発表するが、サプライヤーの首脳は「赤字が出るほど厳しい仕入れ先とトヨタの決算とではおそらく明暗が分かれるだろう」とこぼす。

恨み節を言いたくなるのは、トヨタ本体は生産台数が減っても、新車需要の強い主力市場の米国などで販売奨励金の抑制が効いて台当たりの収益性が高く維持できているほか、中古車価格高騰を背景にリースの返却車両の売却益など販売金融でも稼げているからだ。

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