セレブなプチ起業、「サロネーゼ」とは? 独自のスキルを活用して自宅を教室に

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実は、中村さんのキャリアはピアノ教師から始まった。音楽短大出身の中村さんにとって、ピアノを教える仕事は既定路線といえるもの。しかし、子どもの面倒をみてくれていた母の死や、ピアノ教師を続けることの限界を感じたことで、ピアノの仕事を辞めることになる。

その後、さまざまな習い事を経験した上で選んだのが、ハウスキーピングだった。インテリアに興味があり、毎日の掃除を大切にする環境で育ったことに加え、18歳のころに出会った風水の影響が大きかったと話す。毎日の掃除だけでなく、「風が通り抜けるように見えない収納スペースもつねに片付け、無駄なものを持たない」ことを日々実践していた中村さん。「自分では普通だと思っていたことが、ほかの人にとっては普通ではないことがわかりました」。

35歳でサロンを始める前からブログで情報発信し、多くの読者を抱えていた。「ふつうの日記でしたが、参考になる、ためになると言ってくださる人がいて」。『美的ハウスキーピング』『幸せな美的ハウスの作り方』といった著書が出るたびに受講希望者は増える一方だ。

ビジネスとしては厳しいとの見方も

中村美香さん

まさにサロネーゼのお手本といえるような中村さんだが、誰もが中村さんのように活躍できるわけではない。現在、料理、花、手工芸、ベビーマッサージ、整理収納、ライフオーガナイザー・・・・・・。ありとあらゆるジャンルでサロネーゼが誕生しており、生徒の目も肥えてきている。

サロンによる「おもてなし競争」が進んだ結果、生徒を満足させるためのコストが増えビジネスとしては厳しいものがあるとの声もある。

中村さんも「レギュラーコースではランチの料理も出しますし、そのための試作も行っています。お花の準備などいろいろなコストがかかるので、主婦のパート程度の収入です」と、レギュラーコースとは別に単発レッスンを行い、収入源を増やす努力をしている。サロネーゼとして活躍し続けるのは簡単なことではないが、それでも、自分のスキルを生かして自己実現をしたいという女性にとって、魅力的な仕事の形態であることは間違いない。

(撮影:今井康一)

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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