アメリカの本格的な株価反転はいつになるのか 重要な「4つの相場サイクル」の変化をとらえる

拡大
縮小

2021年は金融相場の色彩を残しつつ、次なるステージの「業績相場」に移行した。新型コロナワクチン開発の成功もあって対面型サービス業が持ち直し、企業業績の回復傾向がはっきりとしてきた。

この間、政府は手厚い失業手当を残し、連銀は量的緩和を続けた。夏の終わりごろには量的緩和の段階的縮小、いわゆるテーパリングに着手し金融緩和の度合いを緩める局面へと移行し、それを受けて長期金利は上昇したが、10年金利は2%以下の水準にとどまった。

2021年後半になるとインフレ率の上昇が徐々に人々の注目を集めるようになっていたが、連銀全体としての見解は「インフレは一時的」であり、急激な金融引き締めを講じる必要はないとした。

大半の市場参加者は、そうした連銀の見解に同意しており、その結果として長期金利の上昇は緩やかなものにとどまり、株価に決定的な打撃を与えることはなかった。株価は業績拡大への期待が膨らむなか、年間を通じて上昇傾向を維持した。今になって振り返ると、2021年は政策支援と景気回復が併存する、投資家にとって最も「おいしい」時間帯であった。

高インフレ早期終了のシナリオが打ち砕かれた理由

そして2022年は次なるステージの「逆金融相場」に移行した。当初「一時的」とみられていた高インフレは、次第にそれが粘着的でしつこさを有していることが明らかとなり、連銀を含む市場関係者が警戒感を強めていたところに、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。原油・天然ガスなどの資源価格が急騰し、高インフレの早期終了シナリオは打ち砕れた。

連銀はインフレ退治に一点集中せざるをえず、金融引き締めを強化する方針を示した。3月FOMCの段階では2022年中に0.25%の利上げを4回実施し、年末のFF(フェデラルファンド)金利水準が1%近傍となる見通しが中心的であった。だが、消費者物価上昇率の9%超えに直面した7月現在において、年末のFF金利水準は3.5%超の水準が予想される状況になっている。

この間、10年金利は一時3.5%付近にまで上昇。長期金利上昇が、株式の相対的な魅力を減じたことで、株価はPER低下を伴い、下落傾向にある。企業業績は現在のところ拡大を続けているが、市場関係者は業績悪化を意識せざるをえない状況に直面している。これは典型的な「逆金融相場」である。

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