アメリカの本格的な株価反転はいつになるのか 重要な「4つの相場サイクル」の変化をとらえる

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次なるステージは「逆業績相場」。このステージにおいては、企業業績の見通しが悪化する下で、株価は下落あるいは低水準でモミ合いとなるのが基本パターンである。

現在の金融市場は「逆金融相場」であるとの見方が基本であるが、逆業績相場に片足を突っ込みつつある点も認識しておきたい。というのも過去数カ月間、アメリカでは業績悪化、すなわち景気後退の到来を意識させる経済指標が増加しており、たとえば金利上昇に敏感な住宅関連指標は顕著に悪化しているからだ。

6月の中古住宅販売件数は新型コロナ特需を完全に消し、パンデミック発生前の水準を下回るほどに減少した。また住宅建設業者の景況感が著しく悪化していることに鑑みると新築販売も減速が見込まれ、住宅に関連する財需要も低下が予想される。

実際、そうした影響もあってISM製造業景況指数など製造業関連の指標は悪化が目立つ。例えば7月21日に発表されたフィラデルフィア連銀景況調査はマイナス12.3と、2020年3~5月を除くと約10年ぶりの低水準となった。

また債券市場では2年金利と10年金利の利回りが逆転する「逆イールド」が発生している。債券市場参加者の間では、連銀の金融引き締めが景気後退を招くとの見方が強まっている模様だ。

当面は金融引き締めに対する警戒感が残存し、長期金利の上昇圧力はくすぶり、株価下落圧力が強い状態が続きそうだが、もう少し長い目でみると景気後退を意識させる材料が増えるにつれて、金融引き締めの終了が意識され、長期金利の上昇圧力が和らぐ「逆業績相場」に移行するだろう。

「金融相場」への移行が早期到来する可能性も

株価の本格的な反転上昇は、逆業績相場から金融相場への移行期に起こりやすい。そのタイミングを探るためには、やはり連銀の金融政策が転換するタイミングを注視する必要がある。現在のFF金利先物によれば、市場参加者が想定する利上げ終了時期は2023年前半、その時のFF金利水準は3%台後半である。

今後、インフレ率が緩慢ながらも低下基調をたどることで連銀は次第に金融引き締めの手を緩めると想定される。その頃にはインフレ退治の代償として景気減速を示すデータが増加し、企業業績の見通しは悪化しているとみられる。

その場合、金融市場参加者は、次なる金融緩和を意識し始める。長期金利は低下し、株式の相対的な魅力が高まることで不況下にもかかわらず、株価は上昇を開始する。そして景気底打ちの兆しが見えてくると、株価はPER拡大を伴って鋭く上昇する。

「逆金融相場」にいる現状において、「次の次のステージ」である「金融相場」の到来を語るのは前のめりな印象が否めない。だが、最近になってエネルギー価格が低下するなどインフレ率が落ち着く兆候が散見されていることを踏まえると、逆業績相場から金融相場への移行が早期に到来する可能性もあり、それに備えておく必要があるだろう。こうした局面変化のタイミングを逃さないよう、金融政策の潮目変化に注意を払いたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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