元UBSグループのエコノミスト、ジョナサン・アンダーソン氏はかつて、中国不動産業界を「宇宙で最も重要なセクター」と呼んだ。それから10年余りを経て、世界の投資家がこのセクターに再び注目しているが、今回は悪い理由でだ。
世界2位の経済大国の約4分の1を占める業界で今週、ストレスの兆しが強まった。住宅ローンを組んで住宅を購入したものの物件が未完成だとしてローン返済を拒む借り手が増えており、中国当局が銀行側とこの問題を話し合うため緊急会合を開いた。事情に詳しい関係者が明らかにした。
中国当局、住宅ローン返済ボイコット巡り銀行側と緊急会合-関係者
パンセオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、クレイグ・ボサム氏(ロンドン在勤)は「不動産はずっと悪くなり続けている。価格や販売、着工と全てがひどい」と指摘。「慢性的な悪化は今、別の一歩を踏み出した。広範に不動産が融資の担保となっており、最終的に金融セクターに打撃を与えるのが常だ」と述べた。
不動産開発大手の中国恒大集団で始まったトラブルが、大半の同業や大手銀行、住宅を買った中間所得層を巻き込む危機に発展しつつある。15日発表の統計によると、中国の新築住宅価格は6月、10カ月連続で前月から下落した。
中国の新築住宅価格、10カ月連続で下落-不動産危機さらに深刻化
Jキャピタル・リサーチの共同創業者アン・スティーブンソンヤン氏は「ピラミッド全体が崩壊しつつある。1年前の恒大危機が中国経済の隅々に波及している」と語った。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の王蕊シニアエコノミストは14日のリポートで、「住宅購入者によるローン返済ボイコットが広がれば、金融システムの健全性のみならず今の景気下振れ局面で社会問題を引き起こす」との見方を示した。
野村ホールディングスによれば、中国では完成前の住宅を販売する慣行が一般的で、これが住宅ローンの返済拒否の背景になっている。開発会社側の資金不足が悪化しており、住宅プロジェクトが完成するとの信頼感が揺らいでいる。
野村の陸挺氏らエコノミストは、中国の不動産開発会社は2013-20年に事前販売した住宅の約60%しか引き渡していないと推計。その間、中国の住宅ローンは26兆3000億元(約539兆円)増加した。
広発証券は最大2兆元の住宅ローンが返済拒否の影響を受ける可能性があると予想している。
中国の銀行は住宅ローン返済ボイコットに伴う延滞債権が計21億1000万元相当に上ることを明らかにした。以下は銀行別の延滞額。
原題:China Property Crisis Is Spiraling With Homebuyers’ Boycott (1)、China Banks Report $312 Million of Bad Loans in Mortgage Boycott(抜粋)
(最終段落と銀行別のローン延滞額を追加して更新します)
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著者:Richard Frost
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