8月にも大きな波が来る。原油価格は容易に100ドルを割らない《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》
第1次王国は当時の超大国オスマントルコといさかいを起こして潰された。第2次王国は王位の継承を兄弟で争っている間に他の有力部族に取って代わられた。そのため、サウジ王家は教訓を学んでいるはず。王国を維持するための譲歩は相当程度するだろうと見ている。
ただ、問題はタイミングよくできるかどうか。国王は86歳で健康不安もあるが、私は7対3ぐらいの確率で大丈夫だろうと思う。立憲君主制までは行くが、王権の制限をどうするかが焦点となろう。
--サウジの前にバーレーンの政権が崩壊する可能性は。
バーレーンは王家を打倒しようという人と、王家を残したままで政治への関与を減らし、国民主導で議会を選定し、首相公選を行うという人の2つに分かれている。今のところ、取引材料として君主制廃止を言っていると思われ、バーレーンの王家は残るだろう。シーア派が社会的に差別されている状況が解決されれば、納得していくのではないか。
もしバーレーンの政権が倒れたら、サウジはかなり危ないことになるだろう。湾岸協力会議機構(GCC)の6か国は王制と首長制の国で、一つが倒れたら完全にドミノになりかねない。サウジの政権維持の可能性も7:3から2:8ぐらいに変わるだろう。だからこそ、サウジ国王が帰国した際、すぐにバーレーン国王に会いに行った。どこまで譲歩すべきか相談したのではないか。
--もしドミノになれば、原油価格はどうなるか。
200ドルを超えるかもしれない。世界経済はパニックになるだろう。
--脱石油も進めざるを得ない。
2030年ぐらいが石油生産のピークと見られているが、世界が今回のことをうけて、中東への石油偏在による石油依存のリスクをこれまで以上に考え、脱石油の政策をさらに推進するだろう。その結果、生産のピークが早まる可能性がある。
--リビアで混乱が落ち着けば、原油価格はどうなるか。
本来は80~90ドルだったが、地政学リスクがなくならないと思われ、容易に100ドルは割らないのではないか。エジプト政変で、8月までに自由で公正な選挙をする予定だ。アラブの人口の4人に1人はエジプト人であり、歴史的、文化的な影響力も大きい。他のアラブの国もエジプトに習おうという動きがあるだろう。その意味でも8月にまた大きな波が来る可能性がある。しかも、それは相当に長い波となるだろう。