みよこは結婚したことがない。これまで深い恋愛もしてこなかった。
「20代の頃に1人、30代の頃に1人、仕事で知り合った男性とお付き合いしたことがありました。ただ2人とも結婚まで進むような深い付き合いではなく、自然消滅的に会わなくなりました。40歳を超えてからは、男性とのご縁もなくなりました」
気づけば50歳を超えていた。みよこが心配していたのは、「そんな自分がこれから男性を好きになって、結婚できるのか」ということだった。
私は、言った。
「30代半ばを過ぎると、普通に生活していたら、結婚できる相手に巡り合える機会は極端に少なくなります。恋愛対象になる素敵な異性は、ほとんどが既婚者ですから。ある程度年を重ねたら、自然な出会いで結婚することは難しい。
だから、効率良く相手を探すために婚活するんです。婚活サイトにいるのは、“結婚をしたい”と思っている独身の男女なので、そうしたなかから自分のフィーリングに合った人を探せばいいんです。好きになれるかどうかは、まずはお会いしてみないとわからないですよ」
私の言葉に、みよこは生まれて初めての婚活を決意した。
何を基準に交際を決めるかわからない
50代のなかではスタイルも良く、清楚な雰囲気のみよこは、50代後半、60代の男性からの申し込みも多かった。
申し込まれたなかで、やすお(58歳、仮名)と初めてお見合いをしたのだが、終えてからこんな連絡を入れてきた。
「普通にお話ができましたが、1時間くらいのお見合いでは、良いのか悪いのかわかりません。何を判断基準にして、交際するかどうかを決めたら良いのでしょうか?」
恋愛経験が豊富にあると、自分がその相手と恋愛できるかは、何となく肌感覚でわかる。しかし、恋愛経験が少ない、またはほとんどないとなると、何を判断基準にしたらいいのかわからない。そこで私は言った。
「嫌ではなかったのなら、ひとまずお付き合いしてみたらどうですか?」
こうして交際希望を出し、相手からも交際希望がきたので、2人は仮交際に入った。
2度目のデートを終えたときに、みよこから連絡が入った。
「やすおさんと一緒にいると、どうしても気になることがあるんです。何かにつけて物の値段の高い、安いを言うんですよ。初めてのデートで映画の後に喫茶店に入ったときも、『ここはコーヒーは1杯800円。お見合いのときのホテルのコーヒーは1500円。ホテルという場所代だろうけど、高過ぎますよね。まあ、800円も高いな。良いコーヒー豆を買って家でドリップすれば、1杯50円もしませんから』とかって」
2度目のデートでは博物館に行き、併設しているみやげ屋に入った。
「そこに、名画がプリントされたマグカップがあったんです。それを見て、『1000円か。高いなぁ。100円ショップのカップで十分でしょ』というんですよ。その後、遅いランチに行ったんです。1人1500円のパスタだったんですが、『こんな冷凍の海鮮を使って1500円は、ぼってるなぁ』って」
そして、お会計の段階になり……。
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