何十年も異性と交際せずに年を重ねてきたのだから、生身の同世代男性を受け入れるのは難しいのかもしれない。恋愛してこなかった期間のブランクを埋めるには、根気よく出会い続け、自分と相性の合う相手を探すしかない。
老いた親の介護と向かい合いながらの婚活
さらに、中高年婚活者に高齢の親がいると、婚活をしようとしても身動きが取れなくなってくる。
さとえ(55歳、仮名)のケースがまさにそれだ。母親はすでに他界していたのだが、91歳になる父親と同居していた。父親は身の回りのことは自分でできるのだが、食事や炊事洗濯はさとえが面倒を見ていた。
父親の朝と昼の食事を作って、会社に行く。夜は帰ってから用意して一緒に食べる。夜、友人らと外食するときには、朝昼晩と父親が食べられるように、3食を冷蔵庫に入れてから出かける。
入会面談に来たときに、こんなことを言っていた。
「母が亡くなり、父と2人で暮らすようになってもう10年経つんですが、やっぱり年々手が掛かるようになっています。ただ、今さら私が家を出て一人暮らしすることも、なんだか高齢の父を見捨てるようでできない。でも“結婚をする”となったら、家を出る理由もできる気がしたんです」
そして、続けた。
「今、父も91歳ですから、あと何年生きるかわからない。父がいなくなったときに、私が1人取り残されるかと思うと、それもまたさみしい。今、婚活をして、将来をともに歩めるパートナーを探すことが、私のこれからの人生のベストな選択じゃないかって」
そうして始めた婚活だったが、活動を始めて2カ月経った頃、父親が庭で転び、骨折をして病院に運ばれた。近所の人が倒れていた父親に気づき、救急車を呼んでくれた。会社に連絡が来て、すぐに病院に駆けつけた。
そこから手術をしたのだが、高齢だったために入院は1カ月を要した。その後、家で1人の生活は難しい状態になったのだが、父親は介護施設に入るのは、頑として「嫌だ」と言い張った。
「6つ下の妹には、すでに家庭があって娘が2人いるんです。遠方に住んでいるし、下の子が高校受験を控えていて、父のことよりも娘の進路で頭がいっぱい。父のことは、これまで同居していた独身の私にすべてお任せ状態です。介護保険のことを調べたり、要介護認定の申請に行ったりと、すべて私がやりました。仕事も日々忙しいし、父のこともあって、ここ1、2カ月は婚活どころではありませんでした」
20代、30代の頃は親も現役で働いている。そんなときの結婚は、自分の身の振り方だけを考えていればよかった。しかし、婚活者が40代後半、50代、60代になってくると、老いた親の介護問題も出てくる。
ただ、これからの人生を考えたら、やはり1人よりは2人。生涯寄り添えるパートナーは必要なのではないか。医療技術が発達し、栄養状態や衛生環境の改善から、平均寿命はどんどん延び、人生100年時代と言われている。中高年の婚活は難しいが、あきらめずにチャレンジしてほしいと、仲人としては思う。
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