「ワクチン接種義務化」に踏み切らない中国の事情 ゼロコロナ政策を堅持する方針の習近平
強権主義の中国で強大な権限を用いて世界で最も厳しい新型コロナウイルス対策を講じてきた習近平国家主席だが、決して活用しないコロナ対策がある。ワクチンだ。
北京市政府が先週発表したワクチン接種義務化はすぐに撤回された。接種済みの証明がなければ公共施設に入ることができないというルールに対しオンライン上で反発が広がり、中国のソーシャルメディアユーザーは市民の自由に対する違法な制約だと主張。ワクチンが変異株に有効なのかとの疑問も呈された。
ほんの数年前まで「一人っ子」政策で産児制限を国民に課し、携帯電話を通じた個人情報追跡や大規模検査、国境封鎖といった物議を醸すコロナ対策を推し進めている中国共産党にとって、ワクチン接種義務化は意外なレッドライン、つまり越えてはならない一線として浮上しつつある。
在中国欧州連合(EU)商業会議所のヨルグ・ワトケ会頭は、新型コロナを徹底的に抑制するという「ゼロコロナ」政策から脱却する可能性を損ねたとして北京市の方針転換を批判。「突然の政策Uターンは、簡単になくならないウイルスから国民を守る効果的なワクチン接種の追求を他の都市に思いとどまらせることになる」と述べ、 「中国経済の苦しみは続く」と予想した。
長期にわたった上海のロックダウン(都市封鎖)は住民の怒りを招いた。外出を禁じられた住民の食料が不足し、コロナに感染したペットが処分されたほか、何より経済的苦境が広がった。