仕事がデキるのに尊敬されない人に足りない視点 部下から人望を集めている人には共通点がある

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この3つの面の中で、強化するのが最も難しいのは背面の「恐怖」だと思います。中坊公平さんの3つの面を私が知ったのはもう10年以上前になりますが、この話を教えてくれた方が私にこう言いました。

「高野さんは背面の恐怖が弱いかもしれませんね」

当時コンサルティング会社で8名ほどの部下を率いていた私は、確かに理屈で説明するのはわりと得意で、部下への愛情もそれなりに持つ上司だったのではないかと思います。

しかし、怖さがあったかというと、まったくないリーダーでした。慕われていると言えば聞こえはいいのですが、悪い点の指摘はほとんどせず、納期を破ったり、約束を守れなかったりしても許してくれる「ゆるいリーダー」だったのです。

なるほど、これが自分に人望がない理由かと得心した私は、背面の恐怖を強化する試みをします。

ところがこれは、まったくうまくいきませんでした。

納期や約束を守れない部下に対して、少し厳しめに注意をしたり、部下の資料のダメ出しを強い口調でやってみたりしました。

すると、「高野さんは優しい人だと思ってたけど、本当はすぐにキレる怖い人なんだ」と見なすようになりました。人望が上がろうはずがありません。

つまり、恐怖を強くしようとしたら、「正面の恐怖」になってしまったのです。

志を強くさせる

そこで、改めて人望の厚いリーダーを観察し直してみると、彼らは決して「恐怖」を前面に出していないことに気づきました。

彼らはみな「理」も「情」も強いのですが、それ以上に「志」が強いのです。絶対に達成する、なんとしてもやり遂げる、この志が強く、その志を「なぜやるのか」という理由づけと、それを行うことで皆が成長できるという愛情と情熱、この熱量が高いことによって、「この人の志を応援したい」「この人の志は邪魔できない」「この人を裏切ることはできない」という緊張感を生んでいたのです。

高い志に向かい、まっすぐに進む姿を見て、人はその背面にほのかな恐怖を感じるのです。

背面の恐怖を強化したければ、恐怖を強める必要はありません。志を高め、「理」と「情」だけを強化すれば、「恐怖」はほのかに立ち上っていくのです。

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