独自取材メモで振り返る安倍氏の肉声と“DNA"  「安倍1強」の最大根拠となった日米同盟強化

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だが、安倍氏にインタビューする前に会った自民党長老の松野頼三元総務会長からヒントを得て、「岸政治」と「小泉政治」の類似性について検証を始めたのである。

松野氏は「岸政治」の流れを身近にみてきた1人であり、小泉家の政治的血脈にも通じた保守派重鎮である。その松野氏が「小泉には岸信介DNA(遺伝子)が継承されている。実は、彼は安保一家なんだ」と指摘したのである。この一言が取材意欲を駆り立てた。

岸信介といえば、①自主憲法、②自主軍備、③自主外交、の「岸政治」に加えて、日米安保改定、警職法(警察官職務執行法)改正などを推進した政治・政策アジェンダによって、右翼・タカ派の政治家イメージが定着していた。

そんな岸のDNAを本当に小泉氏が継承しているのか、と不審に思われるかもしれない。

だが、想起して欲しい。小泉氏は改憲の方向性を明確に指向し、自衛隊海外派遣を公然と推し進め、対米追随の一方で靖国神社参拝の「靖国カード」を対中国牽制に使っていた。これが岸・小泉類似論とされたのである。

安倍内閣誕生、首相再登板の必然

冒頭に紹介した2001年6月30日の日米首脳会談の前に、小泉氏はブッシュ氏からプレゼントされた革製ジャンパー姿で冗談を言いながらキャッチボールをした。

一方の岸氏は初訪米の1957年6月19日、首脳会談前にアイゼンハワー大統領とゴルフをしている(ワシントン郊外のバーニング・ツリー・カントリークラブ)。

こうして安倍首相も2017年2月10日の日米首脳会談後にトランプ大統領とフロリダ州の同氏所有名門ゴルフ場でのプレーを通じて意気投合し、「安倍・トランプ蜜月」を掌中にした。

まさに「安倍1強」の最大根拠となった日米同盟強化を確立したのである。

血脈・年齢・人気度・保守派度からも、2006年9月の第1次安倍内閣誕生、2012年12月の首相再登板は歴史的必然だったともいえる。

筆者はインタビューから2年後の2006年8月6日、当時官房長官だった安倍氏と夕食懇談の機会を得て、新刊『美しい国へ』を手渡された。それから51日後、安倍氏は第90代内閣総理大臣に就任した。「岸」DNAの小泉氏が事実上、後継指名したのである。

亡き安倍晋三氏との関係の一側面を披瀝した。合掌。

この記事は『週刊東洋経済』の連載「フォーカス政治」の執筆陣によるシリーズ2本目です。​以下の記事も配信しています。
苦闘するアベノミクス「3つの変身」で見えた課題
(軽部 謙介 : 帝京大学教授・ジャーナリスト)
日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙
(山口 二郎 : 法政大学教授 )
歳川 隆雄 『インサイドライン』編集長

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1947年生まれ。週刊誌記者を経て1981年からフリージャーナリストに。現在は国際政治経済情報誌『インサイドライン』の編集長。
 

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