東京BRT、「晴海タワマンの足」本領発揮はいつか 五輪終了後の「第2段階」いまだスタートできず

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ただ、プレ運行2次では「バス高速輸送システム」といえる段階ではない。本格運行時には所要時間の短縮に向け、電車のようにすべてのドアから乗車できるシステムを採用する方針だが、プレ運行2次では現在と同様、前のドアから乗車して後ろのドアから降りる一般的な路線バスの方式となる。

東京BRTのシンボルの1つである大型の屋根付き停留施設。設置は今のところ新橋のみだ(記者撮影)

また、停留所も当面は一般の路線バスと変わらないスタイルとなりそうだ。東京BRTは停留施設をシンボルの1つと位置付けており、ホームページなどでは近代的な路面電車のホームを思わせる2段の屋根を備えた乗り場のイメージを掲載している。乗客がバス待ちや乗降の際に雨に濡れないための工夫だ。だが、現時点でこの形となっているのは新橋の停留所のみだ。

これから工事を進める停留所も「プレ運行2次のスタート段階では上屋までは整備しない」(都市整備局交通政策課の担当者)といい、この形の施設をどの停留所に整備するかも含めて現状では検討段階という。一般の路線バスでも屋根のある停留所が多い中、しばらくは乗り場の環境はやや見劣りしそうだ。

本格運行はいつになる?

近年、タワーマンションなどの増加で急速な人口拡大が続く臨海部。現在注目が集まっているのは、五輪の選手村として利用された大規模マンション「晴海フラッグ」だ。同マンション群は最寄りの鉄道駅である都営地下鉄大江戸線の勝どき駅まで徒歩約20分と離れており、東京BRTの本格運行時には「選手村ルート」が開設され、都心部とを結ぶ主要交通機関となる。

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プレ運行2次から本格運行への移行は、主な走行ルートである環状2号線の本線トンネル開通以後となる。同トンネルの開通は2022年度の予定だ。都市整備局交通政策課の担当者は、2024年3月に予定される「選手村(晴海フラッグ)地域の街びらきまでには本格運行開始を目指す」と話す。

東京BRTの停留所には、BRTという交通システムについて「連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バスレーン等を組み合わせることで、LRTやモノレール並の速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステムを指します」との説明がある。ただ、現状は専用レーンなどはなく、”停留所の少ない路線バス”といったところが実情だ。

臨海部では銀座や東京駅など都心部に直結する地下鉄新線の構想もあるが、具体的な計画には至っておらず、当面は東京BRTが担うべき役割は決して小さくない。本当の「高速輸送システム」に脱皮できるかどうかは今後の施策次第だが、まずは本格運行に向けてプレ運行2次を早期に開始できるかどうかが今後への重要な一歩となるだろう。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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