在来線で時速160km運転を実現「681系」の功績 鉄道の「スピード史」を語る上で外せない名車

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なお、時速160kmからの制動距離は720mを要したが、ほくほく線の時速160km許容区間には踏切がないことと、本来1つの閉塞区間に1列車のみ入れるところを時速160kmで運転する列車の場合は2閉塞分使って実質的に閉塞期間を延ばすことで特認された。その結果、2閉塞が空いていることを示すため、緑灯が2つ並ぶGG信号が採用されている。

北越急行が導入した681系2000番代「スノーラビット」。ほくほく線内で最高時速160km運転を実現した(筆者撮影)
JR西日本681系「はくたか」編成も、ほくほく線内での時速160km運転に備え気密性を高めるなどの改造を実施(筆者撮影)

681系「はくたか」は1997年3月22日から運転を開始した。当初は最高時速130kmで運転を開始し、翌1998年12月8日から時速150kmに引き上げた。その後681系2000番代の全検入場時に車体の問題がないことを確認し、2002年3月23日から時速160km運転を開始。681系先行試作車が誕生してから約10年後に悲願の時速160km運転を実現させたことになる。

「はくたか」は2015年3月14日の北陸新幹線長野―金沢間の開業により廃止され、列車名は新幹線に受け継がれた。以後681系による時速160km運転は実施されていない。また、北越急行の681系2000番代は683系8000番代と共にJR西日本に譲渡され、「しらさぎ」に転用された。

クロ681-1001は保存すべき

北陸新幹線金沢開業で、北陸本線の特急車両に余剰が発生し、先行試作車の付属3両編成が2015年9月に廃車となった。

筆者が2009年に「はくたか」に添乗取材した時の写真。681系の速度計が時速160kmを示しているのがわかる

6両基本編成は引き続き運用していたが、2019年10月でクロ681-1001を除く5両が廃車。以後クロ681-1001は吹田総合車両所内で保管されていた。

クロ681-1001の廃車後の処遇は未定だという。しかし、「はくたか」が時速160km運転を実現することができたのも、681系先行試作車の存在があったからだと言える。そのような経緯を考えてもクロ681-1001はぜひとも保存してもらいたい。

なお吹田総合車両所のツアーは好評につき第2弾が6月19日に、第3弾が7月17日に開催された。今後第4弾・第5弾の開催にも期待したい。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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