富山港線、万葉線…復活できた「地方鉄道」の特徴 旅客数を増やし、地域経済にも貢献している

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その後2002年に第三セクター「えちぜん鉄道」が設立されて、翌年運行を再開。社長を地元の民間企業から招き、列車にアテンダントを乗務させるなど、さまざまな需要喚起策を実施して、短期間で運行停止以前の旅客数を回復した。

福井鉄道も厳しい経営が続いていた。親会社の名古屋鉄道は1株1円で株式を地元に売却、福井銀行から社長を招いた。2008年経営から手を引く直前に、名古屋鉄道は岐阜市内線などから超低床車を含む比較的あたらしい車両を転籍させ、サービスの向上を進めた。

福井鉄道は、市内の路面の併用軌道と郊外の鉄道を直通している。大型の鉄道車両が使われていたので、併用軌道区間では、車体からはみ出した折り畳み式のステップを上がらなければならず、必ずしも快適な交通機関ではなかった。名古屋鉄道の低床車が投入された際にホームを切り下げ、あたらしい車両に加えて乗降のしやすさによって、若者を含む多くの市民に受け入れられ、旅客が増加した。

えちぜん鉄道と福井鉄道は、2016年田原町で線路をつないで相互直通運転を開始した。両社は直通用に超低床車を新造し、えちぜん鉄道は越前武生まで、福井鉄道は鷲塚針原まで直通している。えちぜん鉄道沿線から福井市の目抜き通りへ乗り換えなしで行くことができるようになった効果は大きく、両線の旅客数は順調に伸びていった。

既存の線路があることが重要

このように、人口40万人を超える地方都市圏(2020年「国勢調査」によると、富山市41万人、福井市26万人・鯖江市7万人・越前市8万人)では、適切な設備投資により、鉄道が再生されることが証明された。

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ただ利用できる既存の線路がないと、新線を建設するための巨額の投資が必要となるため、人口が40万人を超える都市でも、鉄道を都市の基幹的な公共交通に位置付けることは難しい。

そのような状況のもとで、宇都宮市(人口52万人)では、宇都宮駅と東部の工業団地を結ぶLRT(ライトレール)の建設が進んでいる。線路などの下部構造物を道路施設として公共事業で建設するが、全体の事業規模が大きいため、税金の無駄遣いとして反対運動も起こった。

日本も鉄道が必ずしも儲からない時代になりそうだ。そこで参考になるのが、公共交通に公的資金を投入した上で、一定の均衡状態を目指してきた、ヨーロッパの事例ではないか。例えば、鉄道貨物の効率化、価値主義に基づく価格設定、運行部門への新規参入によるサービスの多様化、ボランティア参加によるローカル鉄道の活性化と再生である。

佐藤 信之 交通評論家、亜細亜大学講師、一般社団法人交通環境整備ネットワーク相談役

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さとう のぶゆき / Nobuyuki Sato

亜細亜大学で日本産業論を担当。著書に「鉄道会社の経営」「新幹線の歴史」(いずれも中公新書)。秀和システムの業界本シリーズで鉄道業界を担当。

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