富山港線、万葉線…復活できた「地方鉄道」の特徴 旅客数を増やし、地域経済にも貢献している

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

バスの旅客は通学生と高齢者などの交通弱者が中心となり、社会的な福祉政策としての意味合いが強まる。そのため、曜日限定の運行を行ったり、地域を小まめに巡回して旅客を拾うために目的地まで時間がかかったりと、時に使いにくい交通手段となってしまっている。

結果としてバスサービスは縮小し、移動手段を失った人たちの引きこもり傾向を助長している。またその不便さのために、若者や働き盛りの人口の流出にもつながっている。

人口40万人以上の地方都市圏では、まだ鉄道が地域交通の主役として活躍できるケースが多い。

富山市には、富山地方鉄道の富山軌道線と郊外の鉄道線、JRの北陸本線、高山本線、富山港線といった鉄道があった。しかし、JRは各線とも運行本数が少なく、富山地方鉄道も一時期は近代化に熱心だったが、全国的に見て自家用車の保有率の高い自動車依存傾向の根強さから、活気がなくなっていた。

そんな中、北陸新幹線の建設に合わせて在来線の高架化が行われることになり、工事中の仮ホームの用地を捻出するために、富山港線の廃止が検討された。そこで富山市は、富山港線の経営を引き受ける第三セクター「富山ライトレール」を2004年に設立して、あらたに富山駅北口まで路面軌道を敷設したうえで、富山港線の線路に直通するトラムトレインに改造した。

2006年に運行を開始した富山ライトレール(現・富山地方鉄道富山港線)は、運行頻度を高めたことと斬新な超低床車両が市民に受け入れられて、大きく旅客が増加した。この成功が追い風となって、富山市は活気がなくなっていた中心市街地に路面の新線を建設して、市内に都心循環系統を新設、都心への転居に補助金を交付するなど、いわゆる「コンパクトシティ」政策を展開した。

その結果、人々の外出の機会が増加し、ついでの買い物なども増えて、既成市街地が再活性化した。

市民の草の根活動から誕生した「万葉線」

同じ富山県の高岡市では、加越能鉄道(現・加越能バス)が経営していた高岡軌道線と新湊港線の廃止問題が浮上したのに対して草の根的市民活動が発生。当初はなかなか市民の支持が得られなかったが、キャラバン活動を展開するなどして軌道線存続を根気強く説得する中で、次第に理解が広がった。

その結果、県や沿線自治体(高岡市・射水市)が出質して第三セクター「万葉線」を2001年に設立し、鉄軌道事業を引き継ぐことになった。

この動きは福井市にも広がった。

福井市では、JRの北陸本線、越美北線のほか京福電鉄福井鉄道部と福井鉄道が運行していた。京福電鉄は、廃止問題が議論されている中で2度にわたる重大事故を起こし、中部運輸局から運行停止の処分を受けた。

次ページ旅客が増加した福井鉄道
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事