富山港線、万葉線…復活できた「地方鉄道」の特徴 旅客数を増やし、地域経済にも貢献している

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では、この基準も満たしていない鉄道はどこまで維持すれば良いのか。これは大きな問題である。実際ルーラルな鉄道は、これらの基準を満たさないケースが多いのが現実だ。

維持すべき路線の選定基準は、過去にいくつか提起されてきた。例えば、国鉄時代には、赤字ローカル線の廃止基準として、「輸送密度」が使われた。これは、路線のある地点で目の前を1日何人の旅客が通過するかという数字で、全線を平均した数値が2000人ないし4000人というのが存廃の分かれ目の判断材料の1つとされた。

鉄道を廃止してバスに置き換えた場合と、鉄道を維持する場合との、純便益の比率が判断材料とされたこともある。しかし、便益の中で大きな比重を占める「存在効果」が厳密に測定できないことや、実際に鉄道を維持すべきとされたケースで、道路の渋滞緩和効果が大きく影響していることが多いという問題があった。

行政が適切に道路を整備しなかったことが鉄道を維持する根拠になるという、常識的に見て不自然なことが起こったのだ。そのため、今ではあまり取り上げられなくなった。

バスに置き換えることの問題点

不採算の鉄道を廃止してバスに置き換えると、便利になるケースは多い。需要が一定以上ある場合は、小さい単位輸送力で運行頻度が高いバスのほうが、混雑を緩和でき、旅客の待ち時間も短くなって社会的厚生が高まる。系統も複数に分けることができて、旅客の利便性が向上する。

一方バスが鉄道に劣る点は、走行路を一般車と共有することでスピードを出せず、定時運行が難しいということのほか、ルートが分かりにくい、系統や時刻が頻繁に変わって分かりにくい、といった情報に関するものが多い。近年はインターネットの普及によってある程度改善しているものの、物理的な固定路を持たないバスの利点と裏腹の関係にあり、鉄道と同等の安定性・信頼性を実現することはないだろう。

また鉄道が廃止になると、自家用車を使える人は自家用車に流れる。バスを使うのは自家用車を使えない人だけになることが多く、たいてい公共交通機関の旅客数は大きく減少する。

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