ワークマンが「靴の大手」へと急浮上を狙う裏側 デザイン起点の商品開発とは「真逆戦略」で勝負

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潮目を変えたのが、新業態であるワークマンプラスのヒットだった。一般顧客が大幅に増え、カジュアル靴の開発への大きな後押しとなったのだ。

一般客に訴求するため、3つのプライベートブランドが立ち上がったことも追い風だった。「それまでワークマンでは“トータルコーディネート”という考え方がなかったが、各ブランドの服に合う靴が必要になり、開発が進んだ」(ワークマンの青木氏)。

在庫管理においても「作業靴の販売ノウハウがカジュアル靴でも生かせる」と、土屋専務は自信をのぞかせる。

そのノウハウとは、バックヤードで在庫を保管するリスクやコストを極限まで減らすため、作業靴などの一部商品で徹底している「売り切れ御免」主義で培ったもの。だが、多くの商品で品切れ状態が続いていては、逆に顧客は離れてしまう。そこでポイントとなるのが、980円の商品だ。

980円の靴は店頭で品切れさせない

作業靴の看板商品である980円の安全靴は、ワークマンの店頭でつねに在庫を確保するように調整している。「他社が真似できない価格優位性があり、お客さんの引きも強いベーシックな商品が重要だ」(土屋専務)。カジュアル靴の場合、980円のキャンパス地スニーカーがこの“マストアイテム”に当たり、品切れさせないようにするという。

商業施設内で展開しているワークマンシューズは今後、単独路面店での出店も目指す。そのために靴のアイテム数を現在の62から150以上に広げる方針で、継続的な商品開発がカギを握る。

現在展開している靴の価格帯は980円~2900円だが、「商品の幅を広げるため、3900円以上の靴も開発していきたい。ただ、その価格帯ではナショナルブランドなどと差別化を図れるかが難しい」(ワークマンの大内氏)。価格帯が上がるほどブランド力を持つメーカーとの競争が厳しくなり、価格に見合った斬新な機能性を打ち出せるかが肝になる。

靴専門店の牙城に食い込むべく始まった挑戦。ワークマンの十八番である、高機能商品の開発力と店舗運営マニュアルの磨き上げがいっそう重要となりそうだ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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