三菱電機「社長クビ寸前」が示す品質不正の傷痕 2022年の株主総会は「賛成率58%」で再任となった

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漆間社長は、不正の起きたFAシステム事業本部や社会システム事業本部で2015年以降に担当執行役を務めている。三菱電機は他社で起きた品質不正問題を機に2016年度から3回、一斉点検を行った。にもかかわらず問題の発見を怠り見逃した責任が当時の執行役にあるというわけだ。

そのうえで、品質風土や組織風土などの諸改革を「漆間のリーダーシップにより強く推進している」(広報)と理解を求めた。

3時間に及んだ三菱電機の株主総会が終了した直後、都内ホテルの会場から出てきた年配の男性株主は、心配げな顔でこう口にした。

2021年6月から社長に就任した漆間氏。社長就任後、「上にものを言える風土を作ろう。失敗しても許容できる風土を作ろう。問題をみんなで解決しよう」と従業員にメッセージを出したという(撮影:尾形文繁)

「きちんと説明しようという経営陣の姿勢はみられた。でも、株価の回復と違って、失った信頼や信用を早期に取り戻すことは難しいのでは」

漆間社長の賛成率が低かった理由は、この株主の感想に集約されている。とくに株主からすると、一度裏切られているとの思いが強い。

一連の不正発覚の発端となったのは、長崎製作所の鉄道車両向け機器での検査不正だが、それを発表したのは2021年6月30日だった。前日の定時総会では何ら言及がなかった。株主を驚かせた不意討ちのような昨年の発表について、今年の総会では出席株主から指摘があった。

「危機管理意識が希薄だ」

「当時は安全性を含め事案の全容を把握し、まずはお客さまに説明・ご理解いただいたうえで社会の皆さまに説明するのが適切と考えた。結果として、情報開示姿勢に不信感を招くことになった」。CFOである増田邦昭常務執行役はそう釈明した。だが納得できない株主からは、「危機管理意識が希薄。会社の信頼をものすごく毀損した」との声があがった。

総会前に出された事前質問への回答に不満を述べた株主の発言からも、失われた信用の大きさが見てとれた。

「(株主からの質問に対し)『この程度の回答でいい』と取締役会で判断していたのであれば問題ではないか。不正問題はお客さんがこれくらいの検査やってくださいと決めていたのに、コストがかかる、安全性には問題ないからと判断して起きた。同じような意識が取締役会にもはびこっているのであれば、(不正問題を受けて)真摯に対応していくと言っているのも嘘になる」

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