「初代天皇の建国」はなぜ「九州」から始まったのか 宮崎から奈良へと至った「神武天皇の東征」

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神話が語られる目的というものは、1つにはさまざまなものの起源を語ることにあるわけだが、古事記と日本書紀の場合にも、そうした面は見られる。イザナミが火の神を産み、それで亡くなってしまう話などがその代表である。そして、イザナミは黄泉国へ向かう。

死が語られなければ、死者の赴く国については語られない。そして黄泉国は、スサノオが赴くことで、その重要性を増していく。

古事記と日本書紀で多く語られるのは神々の誕生である。古事記において267柱、日本書紀においては181柱の神々が登場する。そのなかには重複があり、両者をあわせると全部で327柱になる。

自然を神格化したものや氏族の祖とされるものも

327柱の神々のなかには、どういう神なのかがわからないものも含まれるが、自然を神格化したもの、あるいは、天皇家や豪族、国造の祖とされるものが多い。

例えば、スサノオが高天原を追放された後、オオゲツヒメノカミ(大気津比売神)に出会うが、この神は、鼻や口、さらには尻からさまざまなものを出す。

スサノオは、そのさまを見て、汚らわしいとオオゲツヒメを殺してしまうのだが、そのときオオゲツヒメの頭には蚕が、目には稲種が、耳には粟が、鼻には小豆が、陰部には麦が、尻には大豆がなったとされている。いずれも重要な穀物などであり、ここでその起源が語られている。日本書紀では、オオゲツヒメはウケモチとされる。

あるいは、アマテラスとスサノオの誓約の場面でアメノホヒノミコトが生まれるが、その子であるタケヒラトリノミコト(建比良鳥命)は、出雲国造・无邪志(むざし)国造、上菟上(かみつうなかみ)国造、下菟上(しもつうなかみ)国造、伊自牟(いじみ)国造、津嶋縣直(つしまのあがたのあたい)、遠江(とおつおうみ)国造などの祖とされ、もう1つの子アマツヒコネノミコト(天津日子根命)も、さまざまな氏族の祖であるとされている。

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